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lond日記

思ったことを気まぐれに書きます。

連続ドラマW 地の塩 (テレビ・ドラマ)

テレビ ドラマ

Amazonのプライムビデオで公開されていたので見ました。

www.wowow.co.jp

 

見る前に分かってしまうこと

登場人物と主人公が「神の手」を持つとされる考古学者であることなどから、2000年に発覚した旧石器捏造事件をベースにしているのは明らかでした。また、主人公が大泉洋さんということは、結末は見る前からだいたい予想がつくというものですね。(捏造をしている。熱心な考古学への気持ちから行ったもの。最後にはそれを認める。)

 

あらすじ

大まかなあらすじはこんな感じです。(ネタバレ注意)

3年前に塩野遺跡で日本にはないとされていた旧石器時代の遺物を発見した神村賢作は「神の手」を持つ考古学者と言われていた。塩野町は遺跡の効果で注目を浴び、住民も神村に感謝していた。父親が塩野の郷土史研究家である佐久間里奈は自身が携わる歴史教科書に塩野遺跡のことを掲載しようと取り組み、実際に掲載された教科書が提供される直前だった。そんな時、神村及びその師である桧山の説(日本に旧石器時代があった)の説に異を唱える考古学者の国松が現れ、神村の発見は捏造だと里奈に告げる。仕事熱心で真面目な性格である里奈は「子供が使う教科書に嘘があってはいけない」と別れた夫である新聞記者の新谷に相談、調べていく中で神村を支援している日本考古学連盟名誉会長の檜山や塩野を地元に持つ文部科学大臣の助川、自身が勤める出版社の社長までが怪しい動きを見せていることに気づき、疑念が高まる。そんな折、神村が現在発掘している現場で人の人骨を発見し、20年前に殺害された少女のものであることが分かる。神村の協力で警察は犯人を絞り込んでいくが、人骨発見のニュースを聞いた犯人である柏田は現場に残していた証拠を回収するため神村の発掘チームに加わる。証拠を探していた柏田は居合わせてしまった国村を殺害してしまい、神村にも危険が迫る。そんな中、塩野遺跡の追加発掘が行えることになり神村は塩野遺跡に。記念パーティーには助川、檜山、檜山に正体された里奈も集まる。

 

キャストについて

WOWOWのドラマらしいきちんとした配役をされているとは思います。地上波のドラマは役者ありきで作られますが、違和感のある無しは別にして、その人達に興味がなければそもそも見る気が起きませんからね。

神村役の大泉洋さんは面白い登場人物もお得意ですが、真面目な役柄も素晴らしいと思います。演じる神村も母思いの誠実な考古学者という印象を受けます。

佐久間里奈役の松雪泰子さんはよく見かける「仕事熱心で融通が聞かず真面目一本な女性」という役柄です。

神村の助手役の田中圭さん、神村をサポートし自身の権力拡大を図る檜山役の陣内孝則さん、刑事役の田辺誠一さん、犯人役の板尾創路さんも役柄にマッチした演技だと思います。

 

で、見た感想はどうなのかというと。

旧石器捏造事件をベースにしている時点で最後は想像がつく訳ですが、正直言って松雪泰子さん演じる里奈の考えは行動はありえないと思います。

「子供が使う教科書に嘘があってはいけない」そう考える編集者が居ても不思議ではないです。教科書編纂に関わる人は大義をもって取り組んでいる気もします。ただ、里奈の役柄は最初から最後まで「教科書に嘘があってはいけない」一辺倒です。信念がある、仕事熱心、色んな言い方ができるかもしれませんが、人間ならば考え方のゆらぎがあって然るべき所でしょうが、全く考えが揺らぎません。

「私は真実が知りたいんです」

のお決まりのセリフで「嘘を告白しろ」と始終迫っていきます。


途中、助手である馬場も疑念が膨らみ、神村の師である檜山からあれは捏造だったと思うと情報を得たりして捏造だろうという部分は膨らんではいくのですが、この里奈の偏った考え方や行動に比べれば、自分の保身は出世のために行動する助川議員や檜山の行動の方が余程理解できますし、自身の説に確信をもって捏造を行ってしまう神村の考え方の方がよほど理解できます。

実際の捏造を肯定している訳でありませんがこれはあくまでストーリーですから、里奈のような人間が居る、居るにしても、社会人として自身が勤める出版社が制作、完成、もう発売されようとしている教科書自体を危うくするような取り組みをする訳がないと思うのです。最終的に里奈は出版社を辞めると言いますが、"真実実にたどり着いたとしても、神村にその行動は正しくないと迫ったりしないし、自身が嘘の内容を載せてしまった責任を感じて教科書の発売に関係なくただ職を辞せばいい" と思うのです。

塩野遺跡の発掘再開直後に神村が本当の遺物を発見し、日本に旧石器時代はあったと証明される流れになり、捏造があってもなくても旧石器時代の存在は正しかったという流れになります。教科書の記載は「嘘」ではなくなる訳ですが里奈は納得せず何が正しいのかを神村に訴えます。

自分が納得できないというだけでこれだけ周りを巻き込み、勤める企業のビジネスを危険にさらす、遺跡の発見に湧く地元の人達の事まで落胆させるような行動をたった一人で起こしてしまうキャラクターに違和感しか感じないです。

周りの誰に相談しても否定される状況ですが、だからと言って自分ひとりで本人にしつこく追求し続けるのは "子供のケンカ" のようです。

 

殺人事件という要素

発掘の捏造というだけでは弱いと思ったのでしょうが、遺跡から殺人事件の遺骨が発見され犯人が登場するという要素が含まれています。

神村が事件解決に協力する訳ですが神村が探偵の役割を果たす訳でもなく犯人が神村に一方的に嫉妬し殺そうと近づいてきます。異常心理で殺人を犯すキャラ設定ですがその割には行動が雑すぎるでしょう。

深夜に発掘現場を雑に掘っている所を国松に発見されるのもお粗末ですし、証拠が現場に残っていても数百という数が配られた時計です。そもそもそれが殺人に結びつく訳でもありません。20年露見しなかった訳ですから現場に近づかないか、いっそダイナマイト等で現場をふっ飛ばせば良かったのではないでしょうか。

時効撤廃の関係も含め時効が過ぎていない20年という設定にしたのでしょうが、犯人の行動として中途半端だと思います。

そもそも異常な犯人なら "露見していないだけでこの20年の間に犯行を犯しているかも" しれませんし、知られていない訳ですから計画的で慎重なはずです。一方、通常殺人を犯した犯人は露見を恐れ、逃げ息を潜めて時効を待っているような状況のはずです。それが20年ならいきなり神村の前に現れるのも逆に変になります。

刑事役の田辺誠一さんが遺骨発見を期に急に仕事熱心になるのもありがちだし、遺族である岩崎ひろみさんも存在がうまく活かせていない気がします。もしかするとこの先、刑事と彼女が仲良くなるのかもしれませんが、本作の中ではそういう部分はありませんね。

全5回という枠の中で、発掘の捏造と殺人事件という要素の共存がうまく働いていない感じです。10回以上あれば色々と展開を含められるのかもしれませんが、里奈が捏造を追求する話に偶然、過去の殺人事件が露見。犯人が逆恨みで神村の命を狙うという取って付けのような展開になっている気がします。

 

まとめ: いろいろもったいない

役者さんはきちんとしていて不満はないのですが、社会的に重要であろうテーマに対して、ストーリーに深みがなく、少々現実味のない心理や行動を取る女性が周りの人々のある意味そちらの方が「現実的な行動」を無茶苦茶に壊してしまうという違和感ばかりが残ります。

殺人事件の設定や扱いもすごく中途半端ですし、犯人を異常な行動を取る役柄とせず以前から時おり神村の発掘に参加していた顔見知りの作業員で地味で見立たないまま身近にいた。それが犯人だと発覚する (或いは母に被害が及ぼうとするとか) といった設定の方がテーマとの乖離が少なかった気がします。異常は犯人像とすることで話の流れに違和感ばかりが残ってしまいました。

改めて、実際の発掘捏造を肯定する気持ちは全くありませんが、ストーリーのベースとするには設定や流れがうまくこの話を使えていないなと感じました。大泉洋さんの熱意を持って発掘に取り組んでいる考古学者像がよかっただけに残念な気がします。