lond日記

思ったことを気まぐれに書きます。

トップスピンには厚いグリップが必要?? (テニス)

初心者がテニスを教わる際、フォアハンドのグリップは "セミウエスタン位が基本です" と言われます。また、レベルが上がり、強く打ちたい、スピンをかけたい場合にはグリップをより厚くするという話もあります。これらの事柄から出てくる通説(?)が「グリップは厚い方がいい」「グリップが厚い方がスピンがかかる」という話です。

これもテニスでよくある、理由を考えることなく聞いた話を常識のように理解してしまう『ステレオタイプ(固定概念)』のひとつです。今回はこのことについて考えてみたいと思います。なお、どのグリップがよいではなく、グリップについての理解についてという感じです。

まず、グリップの厚さで生じる大きな違いは "打点の違い" です。


鈴木貴男選手によるグリップによる打点の違いについて

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ボールがラケットに接触する際、ボールを打ち出す角度、方向の真後ろから90度の角度でラケット面を当てるのがもっとも効率よくボールに力を伝えることができ、ブレても5~6度の範囲に収めるべきだと言われています。

ボールの打ち出し角度とラケット角度 打ち出し角度に対しその真後ろから90度の面でラケットを当てる


ネットを越すためにはインパクトにおけるラケット面は、殆どの場合 " 水平 + α " の上向きの角度になるはずですが、ここではグリップの違いによる打点位置を比較するため、打ち出し角度を地面と水平、インパクトにおけるラケット面を地面と垂直とした場合で見てみます。


コンチネンタルグリップの場合、体の真横、具体的には肩の延長線上の位置になります。

フォアハンド 薄いグリップ インパクト


これが厚いグリップになると、ラケットを後ろから支える位置になりますから、肩よりも前の位置になります。

 

フォアハンド 厚いグリップ インパクト


コンチネンタルグリップで打点を前にしようとすると、手首を曲げるか前腕を回転させてラケット面を調整する必要があります。厚いグリップで打点を近くしようとする場合も同様です。ボールを打つ度にこのような調整を行うことは意味がなく、最も自然に力が入りやすい位置がよいので「グリップに応じて打点の位置(場所)は自然と決まってくる」というのが基本となる理解です。

では、なぜスピンを打つ際に厚いグリップがよいと言われるのかというと、人の体の構造によるものです。

先日も書きましたが、人が力強くボールを打つためには「自分の体の正面 (右肩から左肩の間+α) の範囲かつ肩よりも前に腕がある」必要があります。

体の正面且つ肩よりも前に腕がある

押し相撲をする際に左右に大きく両手を広げた状態では力が入りません。力を入れるポイントは自分の体に近く且つ肩よりも前にある必要があります。

ピッチャーがボールを投げる際、ボールをリリースするのは利き腕の肩よりも前に腕と手が動いてきてからですね。肩の真横位の位置でボールをリリースしてはしっかりと投げることができません。

つまり「より強くボールに力を伝えるためには肩よりも前の位置でボールを捉える必要があり、その位置でボールを飛ばす角度にラケット面を作るには薄いグリップは適さない」ということになります。

また、トップスピンという点にフォーカスして言うなら「スピンをかけるためにはボールに対して上向き(前方向)への回転をかける必要があり、ラケットを上向きに持ち上げるための体の機能(肘、前腕、手首)は肩よりも前に腕がある状態で働くようにできているから」というのも需要な点です。

フォアハンド トップスピン


「それなら "スピンをかえるためには厚いグリップにすべき" ということで合っているのでは?」と思えますが、この直結した結論に上達を阻害している要因があると思っています。

簡単に言うと "形を見て仕組みを見ていない" ということ。理解する順番が逆です。

普通そんなこと試さないでしょうが、実際にコンチネンタルグリップでもトップスピンは打てますし、厚いグリップでもスライスは打てます。つまり「グリップの違いは力の入る打点の位置の違いであり、球種の違いではない」ということです。

人の体の機能は決まっているので、「前に向かって腕を振る」という動作は同じ仕組みを前提とした体の動きです。「スピンを打つのは厚いグリップ」「ボレーはコンチネンタルグリップ」という形から入る固定概念が、体の機能を使ってボールを打つには? という根本の理解を邪魔します。「コンチネンタルで普通にスピンが打てるはずがない」と思っているのであれば、それ自体が "体の使い方を理解できていない" 証明かもしれません。体の使い方からボールを打ち方を考えた場合、グリップの厚さというのは "条件" でしかなく、グリップが薄いからスピンが打てないということにはなりません。(コンチネンタルでスピンを打つにはどうすればいいのかと考えれば見方が違ってきます。)

同じ理由で、グリップが厚い程スピンがかかるとか、スピンをかけるにはどの位の厚さのグリップで打つのがいいのか? と言った話も意味がありません。その人の打ち方によっても違いますし、グリップによって打点の位置は変わりますが基本的な体の使い方、腕の振り方は1つ。つまり、打点の位置によって、後ろから前に進んだ腕のその位置で機能する腕の役割 (伸び方、曲がり方) が変わるだけだと考えてもいいと思います。

普段、厚いグリップでスピンを打っている人が、フォアハンドのスライスを練習しようとコンチネンタルグリップで打ってみることはあると思いますが、これは「厚いグリップでスピン」と「薄いグリップでスライス」と別々の練習をしているだけで両者に関連性が生まれません。逆に、体の使い方から理解すれば、グリップが薄かろうがスピンもスライスも打てますし、この理解がフォアハンドだけでなく、同様に腕を振るサーブを打つと動作にも関連してきます。

スピンのストローク、スライスのストローク、フラットサーブ、スライスサーブ、スピンサーブ。簡単な部類したこの5種類のショットをそれぞれ練習するのと、1つの基本で全部が応用できるのでは、どちらが効率がよい、応用が効くかは明らかだろうと思います。

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たびたび書いていますが、「テニスの基本とはボールを打てるようになる技術の習得ではなく、体の使い方を理解し実践できるようになること」で、その理解とは「自分がどう体を使ってボールを打っているか、具体的、論理的に説明ができ、それを聞いた人がその場で再現できる状態」だと考えています。

テニスの練習としてボールを打つ感覚の蓄積だけを上達の術だと考えるのはある程度打てるようになった上級者ならまだしも、それ以外のテニスが上手くなりたいと思っている人には順番が違うだろうと思っています。

「トップスピンを打つには厚いグリップが必要だ」ではなく、「グリップに関係なくトップスピンを打てる。ただ、普段使うのは厚いグリップ」となるべきだろうと思います。その理解はストロークだけでなくサーブにも応用できますから。