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lond日記

思ったことを気まぐれに書きます。

スマートテニスセンサーを使った「スマートテニスレッスン」発表でどう変わる? (テニス)

テニス

結論を先に書いてしまいますが、今回のサービス提供により習う側にメリットは生まれにくいと思っています。すいません。それは構造の問題です。

ソニーが2017年1月13日に「スマートテニスレッスン」を開発、4月よりルネサンスが運営するテニススクールで提供を開始すると発表しました。

www.sony.co.jp


内容としては、スマートテニスセンサーで得られるデータと、ネットポスト(ネット両端の軸)上に設置したカメラの撮影情報を組み合わせて、プレイヤー(スクール生徒)にはタブレットやスマホを使って情報を提供するというもののようです。

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機能としては「撮影動画の確認」「カルテ機能 (ショットデータをフォームとして提示)」「レッスンレポート」の3つのようです。

というか、カメラ撮影とスマートセンサーを組み合わせ「製品としての体」を作ったものでしょうからこの位のことしかできないですよね。

既にスクールでもカメラで撮影した動画を生徒に見せながら説明をしたり、指導カルテを作ってコーチがコメントして定期的に生徒に渡したりしていますから、これにセンサーの情報が加わる感じでしょうか。いずれにせよ映像とセンサーのデータを踏まえて生徒に言葉として伝える役割はコーチが担うのでこれまでと何か大きく変わることはないと想像します。

先日バボラ製の手首に取り付けるタイプのセンサー機器「POP」について書きました。

lond.hateblo.jp


また、今後のテニスにおいてITがどう影響するかについても書きました。

lond.hateblo.jp


SONYとしてはスマートセンサーを広める取り組みをせざるを得ないのはわかりますが、カメラもセンサーも情報収集の手段でしかなく、その情報をどう扱うかを人に依存する構造は変わりません。

海外には、アメリカ、ヨーロッパを始めとした多くの国で導入が進んでいる"PlaySight" というシステムがあります。

日本では、千葉県の吉田記念テニス研修センターにあるだけのようですが、コート上の複数設置されたカメラの情報を自動的に分析し、コート脇のキオスク端末か自身のスマホ、タブレットで分析結果を参照することができます。システムもデータベースもオンライン上になるのでどこでも情報が見られるし、世界中のメンバーと比較もできます。

http://www.tennisworld.net.au/wp-content/uploads/2016/04/playsight.png https://cascade.madmimi.com/promotion_images/0832/5403/original/PlaySight_SmartCourt_interactive_kiosk.png?1474389928


トミー・ハース選手のコメント

youtu.be


日本でスクールやテニスコートを運営するには高いコストがかかります。国内で実績のないシステムを導入する敷居は大きいです。海外は事情が違うのは理解できます。ただ、ソニーのスマートテニスセンサーやバボラのPOPもユーザー自身が利用するものなので手軽な半面、速度が130km/h出た、100回打った、ラケット中央に当たってないと言われてもユーザーにはどうすればいいか分かりません。

ITをテニスに応用する流れは、世界にあるコートの数からすれば僅かであっても、どんどん進むと思いますが、日本のテニスはこういった面でもガラパゴスまっしぐらだと思います。

あと3年もすれば、最先端の技術を要するテニス環境では、

1. 体に取り付ける以外に、ラケットやボール、コート上、コート周辺に設置された色んな種類のセンサーと多くのカメラから得られる情報を収集し、過去に蓄積された自分も含めた多くのプレイヤーのデータと比較し、即時に提示してくれる環境が提供される。

2. 数字や過去の結果から来る練習方法を提示するだけでなく、AI技術により、具体的な練習方法やそのために必要な情報や知識すら、プレイヤーのレベルに併せて分かりやすい言葉で例を上げて説明してくれるようになる。そのデータはコート外でも参照でき、参考例としてプロの動画やCGを解説付きで説明してくれる。


3. 対象となるコート、環境でプレイしたデータは動画や情報を含め、今で言う「クラウド環境」に「標準化された形式で」保存される。各サービスやAIもそのデータを参照することで利用できる。これは医療用電子カルテが共通化されるのに似ている。病院(スクール)毎に保管されるカルテを医者の言葉を通して聞くのとは可能性が全く異なる。

といった風になると思っています。

日本のテニスがガラパゴスと書きましたが、日本のスクールは「テニスを教わる所」より「ボールを打つ機会を提供する場」という側面がとても強いのに「テニスというスポーツの専門性」という点から、学校教師のように「コーチのスキルやノウハウ」に大きく依存していると思っています。国家資格こそないですが経験がひとつの基準となりますね。

ただ、スクールに通う生徒の多くは競技者を目指す訳でもなく、初心者から一定レベルまで効果的に上達することを望みますし、個人的にはそれをもたらすのはコーチの「テニス技術の高さ」ではなく、「必要となる様々な知識が整理されておりそれを分かりやすく理解させ実践させられる教え方」であるべきだろうと思っています。

ITにより増える情報量をコーチが指導の参考にするだけ、情報として生徒に提示するだけなら今までとなんら変わりません。現状のテニスコーチの役割を否定するつもりはありませんが、IT技術をテニスの現場に取り入れるなら、スクール自体の仕組みを変えコーチのスキルや役割を変えないと意味がないです。

テニス漫画ベイビーステップで主人公がアメリカのアカデミーに短期留学した際に登場したデータ分析専門のアドバイザーのような存在をスクール内に確保する方法はあると思うし、ジム併設のスクールも多いでしょうから、身体機能や怪我防止、反射神経や運動能力を磨くトレーニング、ボールを打つ以外に「知識や戦術を学ぶ授業形式」の時間帯を作ればいいと思います。これらはコートを使わずにできますから、1日の時間割を圧迫しませんね。でも、こういった事を計画し実行することも、色々な制限でままならない状態なのだと思います。


私は学校に対する塾のような、プレイヤーのテニス地力を上げるための「ボールを打たないテニススクール」があっていいと思っています。

ボールを打たないなんて意味がないと思うかもしれませんが、上達に必要なものはボールを打つ経験で技術を上げようとすることよりも "ごくシンプルな知識不足の解消"だったりします。一流大学に合格したいのであれば日本トップクラスの予備校講師の講義を受ける意味はあるかもしれませんが、平均点に到達するために必要なのは「理解でき、問題が解けるようになる教え方」で、それは「きちんと整理、平準化されたメソッド(教え方)」があればよく、逆に言えばそれがないから教える側の経験やスキルを基準にするしかないと思っています。(週何回もスクールに通ってるのに全然上達しないのは自分のセンスがないからでしょうか?  大会で何度も優勝しているような高い技術を持つコーチに教わるのは意味があるでしょうが教わって自分がそうなれるかどうかはまた別の話ですよね。指導が合う合わないということもあります。)

また、指導のあり方で言えば、Playsightのようなシステムを各コートに導入して、そのスクール以外の様々場所でのデータを生徒自身が活用できるようにする、その先にあるAIがアドバイスしてくれる未来においてコーチが果す役割は何かについて考えるべきではないかと思います。

割り切ってバッティングピッチャーのような役割になってもいいし、AIが言う指導を実践するよう役割分担してもいいし、技術や戦術に特化した指導をしてもいいし、様々分野の知識からトータルにテニスのレベルアップをサポートする役割になってもいいと思います。

専門学校を卒業してバイトのコーチから社員コーチを目指す進路だけだと自分の技術を磨く以外に選択肢が見つからないのではないでしょうか。

話がスクールやコーチの役割についてと反れてしまいましたが、せっかくのIT進化が望ましい形で我々の目の前に登場してこない国内の現状について残念に思っています。これだけスポーツに対して科学等多方面から研究が進んでいるのに、日本におけるテニスの教え方は昔から大きく変わってないように感じます。詳しい訳ではありませんが、アメリカのプロコーチの仕組みを見たりすると、日本中でテニスを教えるための基本的なメソッドが整理、平準化されれば、初心者でもお子さんでももっと多くの機会で最初から効果的な上達が目指せるのではないかと思っているのです。