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lond日記

思ったことを気まぐれに書きます。

サーブは腕が伸びた状態がインパクトの形なのか? (テニス)

テニス

サーブについて説明される際に「腕が伸びた状態でボールをインパクトする」「サーブのインパクトでは腕が伸びている」といった表現をよく聞きます。

個人的にはこの表現が "サーブにおける根本の部分で大きな誤解を招いている" と考えています。

テニスの指導では、このような "ボールを打つという全体の動きの中の一瞬を切り抜いたイメージ(静止画)を「プレイヤーが作るべきフォームの見本」として提示される事" が日常的に行われています。

 

しかし、ボールを打つために行っていることは "体全体を使い、腕でラケットを加速させ、結果的にラケットが触れたボールに運動エネルギーを伝えている" ということです。スイング開始からフォロースルーまでの一連の動作に意味があるわけでその途中の形を切り取ることに大きな意味はないです。

"体の使い方を理解する事""ある位置時点の形を再現すること" に直接の関連性がないためで、それはまるで「◯◯選手のインパクトの形」をみんなの前でマネして見せるようなものだと思います。

※これからテニスを習うという人にイメージさせるために「インパクトではこのような形になります」と提示して見せる意味はありますが、そこから "体の使い方" を理解させることがないまま、「インパクトの形はこうならないといけない」と刷り込みを行うことに問題がある訳です。


さて、サーブの説明において言われる「腕が伸びた状態がインパクトの形だ」という説明ですが、これはプロ選手等がサーブを打っている際のインパクト前後の静止写真を見るなどして、言われているものだと想像します。 


フェデラー選手のサーブ画像

ただ、考えてみてほしいのが "インパクトの瞬間もラケットは動き続けている" という点です。

テニスにおいてボールとラケットが接触するインパクトの時間は 0.004秒位と言われていて、プロ選手のサーブは200km/hを超えたりしますが、仮に、プレイヤーが時速150km/hでラケットを振るとして、インパクトの時間である0.004秒の間にラケットが進む距離を計算すると

150,000m / 60 / 60 * 0.004秒 = 16.666m


つまり、インパクトの0.004秒の間にラケットは約17cm前に動いていることになります。17cmというのはラケットのグリップ部の長さと同じ位です。


私は、インパクトの形の例として挙げられるこういった腕が伸びた状態の静止写真は、インパクト時間(0.004秒)の終わりに近い部分、ボールが離れる間際か、離れる瞬間前後の写真だと考えています。つまりラケットが17cm進み切った辺りといういうことです。

腕の使い方を考えるために敢えてサーブと体の使い方が似ていると言われる野球のピッチングを例に考えてみますが、ピッチャーがボールを投げる際、予めボールを持った手をコックする(担ぐ)動作をします。その際、脇と上腕は90度、上腕と前腕(肘)は90度、上腕と胸は180度以上の角度を取ります。

これらの角度は特に教わることがなくても、ボールの投げ方を理解している人なら誰でもが無意識に取れるものです。つまり、"人が自然に行う動作" ということです。

右ピッチャーだとして、上げた左脚を前方に着き、体の軸を右脚から左脚上に移した後、体を90度回転させながら腕を振りますが、ボールを離すまで利き腕の上腕や肘は角度を保ったままで伸びてしまうことはありません。

肘を伸ばした状態では腕を速く振れないことはボールを投げたことがある人なら分かりますね。

この腕を振る動作の中で、テニスでも使われる言葉で言えば、外旋と内旋、回外と回内(プロネーション)の動作が "自然と" 起こっていますが、これらが連動して自然と起きるには、 "腕や肘の角度" が必要です。

ただし、ピッチャーがボールを投げる際のリリースポイント付近の写真を見ると、テニス選手のサーブ同様、腕が伸びている静止画が多いです。

如何にもボールを投げているという感じの写真に見え、サーブ同様に野球をやっている人はこの形をリリースの形だと考えることも多いと思います。しかし、上で述べたのと同様、ボールを離す瞬間にも腕は前方に進んでおり、手や指から離れる瞬間の最後の方を撮影しているのでこのような写真になると考えています。

理解すべきは、「コックして角度を作った腕を角度が保ったまま振っているから速く力強く腕が振れているのだ」という点で、"腕がボールに運動エネルギーを伝えきり、離れる時点の形を再現しようとする" ことではありません。

サーブにおいても大事なのはボールに触れて離れる0.004秒の間、17cm進む間であり、その間にラケットがスイングによって発生さえた運動エネルギーをボールに伝えないといけません。それは正しい体の使い方をすることでラケットスピードを加速させることであり、インパクト完了直前の形を作ることではないです。

youtu.be


蛇足になりますが、サーブというと話に出てくるキーワードである「回内(プロネーション)」ですが、途中触れたように腕に角度を保ち、腕を振る際に自然と発生する動作です。コンチネンタルグリップ等でサーブを打つ際、ラケットを加速させやすくするためにラケットのフレーム側からボールに近づける方が良いですが、そのままではラケット面でボールを捉えられないため、プロネーションで腕を90度回転させる事でラケット面をボールに向けるだけです。

ボールを投げる際、小指側から手が進んでいかないのは、ラケットにおけるリリースポイントが手よりも約60cm遠くなるため、腕や手よりもラケットヘッド側をより加速させないといけないためだと考えます。手に付いた水滴を振り払う際、自然と親指側を上向きにした角度から腕を振り(内旋)ながら腕を捻り(回内 - プロネーション)、親指が下側にくる状態になるのと同じです。手に付く水滴を払うには手よりも外側に飛ばす (慣性の力 - または遠心力) を発生されることが効果的である事を日常の経験で理解しているからです。

サーブを上達させる道は、現状のレベルに関係なく、形をマネることよりも、(知識として理解、実践できていないのであれば)ピッチャーややり投げ選手が行う体の使い方、腕の振り方を参考にして、体をどう使って腕を振れば、力を込めず安定して速くラケットを振れるのかという点を理解することだと思います。

それは「コツ」を参考にすることとは根本的に違います。世間で言われる「サーブのコツ」を実践しても自分で未熟と思うサーブが劇的に上達するようなことは殆ど起きないだろうと思います。体の使い方が分かっていない状態でいくら技術的な試行をしても大きな改善は望めないからです。

テニスで安定してボールを打つ基本的な事柄は技術の高さではなく、誰でもできるような体の使い方がテニスでもできているかだと考えています。

テニスの指導として説明される情報にはそういった事柄が含まれていないので、「こうやって打ちます」という説明をそのまま聞くだけでは本質である部分は理解できないのが現状でしょうか。本来であれば誰でももっと苦労せずにサーブの打ち方をマスターできるだろうと思っています。