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lond日記

思ったことを気まぐれに書きます。

「ボールを潰す」ということ (テニス)

テニス

以前にインパクトにおけるボールの状態と回転をどう考えるかについて書きました。

lond.hateblo.jp


その中でも触れましたが、フォアハンドストロークに関する話の中で『ボールを潰す』という表現を聞くことがあります。

「潰して打てばボールの威力が上がる」「強く打ちたければボールを潰さないとダメだ」のような使い方が多いでしょうか。

ただ、真剣に考えようとしている方には恐縮ですが多分に「漫画的なイメージを持ちすぎ」だと思っています。(サッカー漫画で主人公が蹴ったボールがぐにゃっと変形しながら空気を切り裂いて飛んでいくみたいな。。)

テニスボールは表面にフェルト生地が貼ってあるゴム素材で中身が空です。指でぎゅっと押さえても若干なら凹みますね。実際、どんなにゆっくり振ってもラケットに当たる事でボールは変形します。

youtu.be

 

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飛んで来るボールはそれ自身運動エネルギーを持っているし、硬い素材 (ラケットのガットや地面) に衝突すれば、硬度がより低いボールの方が変形するのは自然な事です。ラケットはそれ自身もボールに向かう運動エネルギーも持っている衝突です。仮にボールの変形が運動エネルギーの大きさに耐えられなければ、ボールが「パンク」するのも理解できると思います。

よく言われる「ボールを潰す」とは "ボールの変形度合い" というより、ボールが大きく変形するほど大きな運動エネルギーがラケットで伝わっているという意味だと認識すべきで、関西弁で「ボールをしばく」という表現がありますが、このニュアンス7割に変形したボールのイメージ3割を足したようなものかもしれません。

「ボールを潰せば威力が増す」という表現を考えると、自分がやっているのは "ラケットスイング" であり、そのエネルギーの大きさ (=スイングスピードの速と+ラケットの重さ (+当たり方))で "ボールの変形率が違うだけ" です。つまり、目的は一生懸命ボールを潰そうとすることではなく、スイングスピードを上げて運動エネルギーを増すことです。自分がやっているスイングの速度ではなくそれにより発生する運動エネルギーで生じる "ボールの変形度" を基準に考えるのも変です。

考えてみれば、ボールを潰すという表現のおかしな点が分かりますね。


さて、「ボールを潰す」のではなく「ラケットスピードを上げる」ことを考えるべきだとして、ボールが潰れることで何か起きるのか? についても考えてみたいと思います。

より変形の度合いが大きい軟式テニスのボールを考えてみると分かりやすいですが、インパクトにより変形したボールはラケットから離れた後、復元しながら飛んでいきます。(ボール内部の圧力は内部の全ての面で均一な状態が通常だから)   また、変形が復元して "球" に近づかないとボール周辺の空気抵抗にムラがあり飛んで行きにくいし、球状に近づけば空気抵抗と速度の低下に伴いボールの回転数も上がっていきます。


硬式テニスのボールよりも柔らかく変形度合いが高い軟式テニスのボールは、球状に復元するまでも時間がかかり、復元後も反動で周囲が伸び縮みしながら空気中を完全な球状でないまま飛んでいくと想像します。このため、硬式テニス程のボールスピードが出ないし、硬式テニスでは必須となるボールへの回転が有効に働きません。ボールの大きな変形率を踏まえてボールを飛ばすためにフラットで強く振り抜く事を重視した打ち方になりますね。

硬式テニスのボールは軟式テニスよりも復元はしやすく、短い時間で復元して球状に近くなった (多少のブレは続く) ボールは、ラケットから加えられた運動のエネルギーにより前方に進み、空気抵抗によって次第に速度が落ち同時に回転量が増していきます。軟式テニスのボールや漫画のイメージと違って、潰れる程変形した硬式テニスのボールが球状に復元する前に地面に着地する、或いは初速に近い球威のまま着地するというケースは殆どないはずです。

他にも、ボールを潰すという表現について
「ボールを潰しながら回転をかけるにはどうすればいいか?」「ボールを潰すことと回転をかけることは両立するのか?」といった疑問も聞きますが、これも「ボールを潰す」と「ボールに回転をかける」の意味を理解できていないために生まれます。

ラケットによりボールに伝わる運動エネルギーは「1/2 x ラケット重量 x スイングスピード^2 (2乗)」で表せます。ボールに伝わった運動エネルギーはボールスピードと回転量に反比例的に分配されます。

変形から球状への復元に伴い若干のロスが生じるとしても、運動エネルギーの大きさにより生じるボールの変形度合いは自身で考慮できる要素ではないですから気にしてもしようがありません。いずれにしてもパンクするほどボールに力を加えることは不可能です。ボールを打つに当たり重視する点は端的には「スイングスピード」と「当たり方」だけ となります。

ラケットがボールに運動エネルギーを伝える際に影響するのは「ラケットの当たり方」なので、正確なインパクトができていなければ、ボールに伝わる力は部分的にバランスが悪く (回転をかけるための力の不均衡ではなく、力のロスやバランスの悪さという意味) なります。スイングスピードを上げる前に正確にインパクトすることの方が大切だということです。

ただし、"安定した体の使い方によるスイング" がそのまま "安定した当たり" に繋がります。いかにラケットをボールに「当てるか」と考えると不安定さを引き起こすラケット操作に繋がります。

皆がボールを強く打つことに注目しますが、そのために都度インパクトが不正確になり、安定性を欠く、ミスをする、ボールに伝わる運動エネルギーにロスが生じるといった可能性には目を向けません。インパクトが正確ではないのは「技術が低いから」ではなく「体の使い方に無駄がある」からだと思います

 

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