lond日記

思ったことを気まぐれに書きます。

改めて「サーブは上に向かって振るという表現」について (テニス)

以前、「サーブは上に向かって振るという表現」について書きました。

lond.hateblo.jp

これを書いた時は色々な情報をまとめきれず思うままに書いていましたが、今はもう少し整理して考えられている気がします。

ポイントとしては

「回転の有無に関わらず、サーブは打点から一直線に打ち下ろすのではなく、一旦上向きに打ち出さないとネットを越えられない。」

「ラケットを上向きに振るのはトスしたボールに当てるためではなく、スイング軌道により、ボールの打ち出し角度や方向を作るためである。」

「打ち出し角度に対しボールの真後ろから90度のラケット面で当てるのが基準となる。スピンをかける場合ボールの上側に振り抜くことになるが、その際も当たる角度はこの基準から変えてはいけない。」

といったところです。一見当たり前の事を言っているようですがサーブ練習では曖昧なままになっていると感じます。

今時点の理解で改めてポイントとなる点を確認してみたいと思います。なお、内容は「サーブの打ち方やコツ」についてではありません。"上向きにラケットを振る"という意味についてになります。


1) ボールの捉え方と打ち出し方向や角度


まず、ショットの種類に関わらず、ラケットをスイングする(振る) 第一の理由は スイングで発生する運動エネルギーをボールに伝えるため です。

もうひとつの大きな理由はラケット位置を調整してボールに当てるためですが、ラケットをボールに当てようとする操作 が逆にボールを正しく捉えることを邪魔してしまうことも多いです。

ラケットの運動エネルギーは "1/2 x ラケット重量 x スイングスピード^2(2乗)"と考えられ、ボールにエネルギーが伝わる際の要素として "当たり方" が加わってきます。

ラケット重量は固定ですから、スイングスピードが上がる程ラケットの運動エネルギーは増え、ラケットがボールに当たる際の当たり方により "ボールスピード" と "回転量" に(反比例的に)分配されます。回転にエネルギーを割かなければ真後ろからまっすぐ当てる "フラット" が最もボールスピードが得られるのは分かりますね。

当たり方については、インパクト時、ラケット面は「ボールを打ち出す方向、角度に対し真後ろから90度に当てるのが最も効率よく運動エネルギーを伝えられ、ズレても5~6度の範囲に収めないと安定した当たりは得られない」と言われています。

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スピンをかける際も打ち出し角度に対して90度(誤差5-6度)で当てる点は変わりません。

「スピンをかけるにはラケット面を伏せる」
と言われることがありますが、感覚やイメージ上の表現として用いるならともかく、実際にラケット面を伏せていくとボールを捉えらるのが難しくなります。スピンをかけようとする人の当たりが安定しないのはこれも一因です。

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サーブにおいて、"回転をかけない" という意味で皆が言う「フラットサーブ」は自身でコントロールできない要素である "空気抵抗" や "重力" により空中で "失速し、たまたま" 入っているだけです。度々書いていますが、計算上、身長2mの人が無回転のサーブを打つとしてネット中央の一番低い所を通したとしてもネットの上ボール1個程の空間を必ず通さないと入らないからです。これが全てのサーブで必ず回転をかける根拠になります。

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このため「サーブにおけるボールの打ち出し角度や方向を考えれば、回転の有無に関係なく、打点からサービスボックス(地面)の一点を結んだ直線より上向きの角度や方向で打ち出す必要がある」と言えます。地面ではなく空中に向かって打ち出すということですね。当たり前だと思うでしょうが、その 理屈 を知っているのと知らないのではサーブに対する理解が全然変わってきます。



2) スイングとラケット軌道

多くの人が「頭上にトスしたボールに当てるのだからラケットを上に振っていくのは当然だ」と考えるでしょうが、回答としては "7割くらい間違った認識" だと思っています。

本質的に言えば、 ボールの打ち出し角度や方向は、スイングの方向や角度、ボールとの当たり方によって決まります。

「ラケットを素振りしてみて、そのスイングの途中にインパクトがあると考える」というアドバイスは割と的確だと考えています。何かを投げる際のように人が力を入れやすい形で "自然と" 腕を振る中で、ラケットを持ち、ラケットが通る軌道上の空中にボールがあれば最も効率よく力が伝えられるはずです。

ボールは基本、インパクトでラケットが向いている方向に飛ぶため、スイングとしては "ボールに当てるため" ではなく "正しい体の使い方を用いて打ち出したい方向・角度に腕を振る" 方が結果に結びつくと考えられます。


また、ラケットはボールと離れた後も加速を続けている必要があります。

慣性の法則により動いているラケットはそのまま動き続けようとするためインパクト後も動き続けている方が軌道が安定することと、ボールは打ち下ろすのではなく打ち上げるので、ラケットがボールに当たるのは上向きに(ラケットヘッドが)動いている時で ラケットが描く弧の頂点は "インパクト時" ではなく "ボールが離れた後" に迎える必要があります。

様々な点において、"ボールに当たるのが終わりではない" のです。


弧の頂点でボールに当たる
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頂点で当たると上向きに飛び出さないし、ヘッドの移動距離(加速度)が下がった状態で当たる。


ラケットヘッドが弧の頂点に向かう中で当たる
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ヘッドが上向きに加速を続けている中でボールを捉えることができる。ラケットスピードはボールスピード、回転量に直結する。

フェデラー選手の回転系サーブ

youtu.be

ボールを捉えた後に弧の頂点を迎えるのがわかります。

サーブを練習する多くの人が、ボールに当てるためにラケットを振り上げているために「飛び始めたボールを見るまでボールがどこに飛んでいるのか分からない」のではないでしょうか? 想定通りにスイングができていれば「予めイメージした軌道通りにボールは弧を描いてる」はずですね。

※サーブに関する2つの補足情報

プロネーション:
サーブにおけるプロネーションで、ラケット面がインパクト時より外側(アウトサイド)に向いてのはボールが離れて暫く経ってからです。180度ラケット面が動き続ける中でボールに当たると思っていると正しく捉えることができません。プロネーションは、フレーム側から進むラケットの面をボールに向けているだけと考えるのが相当だと思います。

ジャンプ:
サーブにおいて殆どの人が無意識に行うジャンプは打点の高さを作るためではありません。前述の通り普通の身長の人がジャンプしてもサーブの確率は変わりません。むしろ都度ジャンプすることで目線がブレたり、体の軸が動くことでボールを捉えにくくなる要因になります。ジャンプするのはラケットを上向きに振ってボールに回転をかける "補助動作" に過ぎないと思います。従って、サーブで回転をかける技術が伴わない段階、サーブが安定して打てない段階ではジャンプをしないで打つ練習をする方が望ましいとも言えます。



3) ボールとのインパクト

フォアハンドにおいて地面と垂直に近くラケットを振り上げてもボールには正確に当たりづらく回転がかかっても満足に前に飛んでいきません。サーブも同様でボールを前に飛ばすより回転に多く(且つ当たりが悪く非効率に)ラケットの運動エネルギーを割く意味がないと思います。プロ選手のフォアハンドはラケットを引き起こす "回転をかける動作" よりも前に向かって振る "ボールを飛ばす動作" の方がはるかに強いです。ラケットとボールの接触時間は 0.004秒程ですからボールにエネルギーを伝えるのに無駄な時間はなく、効率の悪い伝え方も行うべきではありません。


サーブにおいて上向きにラケットを振るのは運動エネルギーをボールに伝えて回転をかけるためですが、0.004秒しかないインパクトにおいてボールとラケットの接触は "正確に無駄なく行われるべき" で、一生懸命ラケットを振ろうと力む中では正確性は失われます。リラックスできていれば"慣性の法則で加速後動き続けようとするラケットの動き" を妨げません。その安定性を活かしてボールの打ち出し角度や方向、ボールの軌道に反映されていきます。

回転をかけないサーブは空気抵抗と重力に依存しており使うべきではないと書きましたが、フラットサーブ(回転をかけないとは意味が違います)とスピン/スライスサーブの間はボールに伝わる運動エネルギーを0~100までの間で速度と回転に分配するというルールが存在するのみで0か100かの二択ではありません。

自分がボールを打ち出したい角度や方向を作るには "ボールを真後ろから正確に当てること"、そのためにはまず速度と回転量を抑えたゆっくりとしたサーブで確認していくことだろうと思います。0から100の間で安定した回転をかけて打てる幅 (仮に30~60) が通常打つべきサーブで、入らない力任せの無回転サーブも回転ばかりかかって飛んでいかないサーブも実用的ではありません。

なお、"サーブを打つ際の体の使い方" ができていない人はサーブ練習の前にそちらを学び身につけることが必要です。サーブが打てることと体の使い方ができているは全く別です。現実問題としてサーブの打つための体の使い方について教わる機会はほぼなく、"自分は出来ている" と思っている殆どの人が問題を抱えてたままサーブを打っています。(理解できてる人は体の使い方を論理的に説明でき、それを初めて聞いた人がその場で再現できると思います。イメージでしか表現できない人はそれができません。)


4) ボールの飛ぶ軌道

初心者でも、ゆっくりとした高さのある軌道で打ち合えば、スピンがかからないフラットなボールでも安定してストロークラリーが続くのは "打ち出し角度に対し真後ろからまっすぐ当てられる" ためです。

ただ、スピードを上げていくと軌道を下げ、回転もかける必要があり、打つ際にはどの位の速度と回転量、打ち出し角度で打てば、どのような軌道でボールが飛んでいき、着地するか想定して打つこととなります。

サーブも同じことで打点からサービスボックスの一点(地面)を結ぶ直線より上に向け打ち出すに際、打点から着地までの放物線の軌道をイメージして打つ必要があり、その軌道を実現するための、打ち出し方向と角度を実現するのがスイングです。(すごく当たり前の事を言っています。)

ただ、前述の通り、"頭上のボールに当てにいく" 、"サーブはジャンプして打つものだ"、”サーブは体重移動が必要だ” といった意識がラケットをスイングする際に体の軸を傾け目線がブレることに繋がり、ボールとラケットの位置関係、自分はどこに向かってラケットを振っているのか、どこに向かってボールが飛んでいるのかを認識できなくしてしまいます。

サーブの練習をする際は、"体の使い方" をまず学習・理解し、野球のキャッチボールのように体の軸を前後左右上下にブラさないようにリラックスして腕を振る事を確認します。

野球選手は遠投する際、腕を振る軌道は上げず、上半身(胸は顔)を投げる方向に向ける(上げる)ことでボールを投げる軌道を上げます。腕を振る角度を上げてしまうと腕を強く振ることが難しくなってしまうからです。

サーブにおいても、両足を地面につけジャンプしない状態で、水平方向にボールを打ち出すイメージで素振りを行い、そこから上半身(胸)を若干上に向けることで腕を振る角度を変えずにスイング方向を上げる方がよいと思います。

本格的に回転のかかったサーブを打つにはより体の使い方やスイング方向に工夫が必要でしょうが、ゆっくりとしたスイングで軽く回転をかけてネットを越すサーブであれば打ち出し角度は水平から5~10度程度上にあがる程度で十分でしょうし、正しい体の使い方を確認するのに役立ちます。

野球選手がゆっくりとしたボールで軌道や相手に届く着地点を確認しながら遠投のキャッチボールを行うように最初から強く腕を振る中でサーブにおける体の使い方を確認するのは困難です。


今回も色々書きましたが、サーブでラケットを上に向かって振るという表現に関して一番多いのは「頭上のボールに当てるため」という認識でしょうか。また「回転をかけるため」だと多少思っていても、ラケットがボールに与える影響とサーブへの関係を考える機会はないと思います。これらを理解し、ラケットスイングがボールが飛んでいく条件を作り、サーブという形で現れると考えれば、ラケットを振ってサーブを打つという動作に色々と違って意味を見いだせ、それがサーブ品質の向上に繋がるのかなと思います。正しく体を使ってスイングする事を学ぶだけでも安定感もスイングスピードも格段に違います。コツやヒントを追いかけ数を打つだけでは感覚面で満足できてもサーブ自体は良くはなりませんよね。