lond日記

思ったことを気まぐれに書きます。

初心者がボールを打つ前に知っておくべきこと (テニス)

最初に、私は、テニスを始める初心者の段階で「ボールが飛び、回転がかかる理屈」「ラケットがボールを飛ばす理屈」「体を使って力を出すとはどういうことか」などを理解しておくべきだと思っています。これらはスクールの初心者クラスで教えてくれるような事柄ではありませんが、これらの理解するのとしないのではかなり違ってくるはずです。例えば、力の出し方や体の使い方を知らないまま、陸上競技の練習をどれだけ繰り返しても、記録はもちろん自分の持つ能力や才能を発揮できる段階にもたどり着けないのは何となく分かると思います。走るための体の使い方や地面に力を伝える方法は練習の中で覚えるより早い段階に教わっておくべき項目だからです。

ただし今回書こうと思うのはもう少し簡単な事柄についてです。

ラケットを使ってボールを思った場所、球種で運ぶ必要があるテニスでは、ボールにラケットを正確に当てられなければ何もできません。できないだけで自分からミスをしてしまい何もしないまま相手に負けてしまうことになります。

テニスを習っていると、ボールをうまく打つのは「技術的な問題であり上達すれば改善する」と思うでしょうが、個人的にボールを打つ際に使う技術的要素はだいぶ上の段階の事柄で、安定してボールを打つための要素はもっと基本的な部分にあり初心者に近い段階でも実践できる内容が中心になると考えています。


初心者がテニスを習う際に直接教わらないので「認識しづらい点」をいくつか上げてみます。(色々あってまとめられないので雑多に上げる感じになります。)



1.ボールを飛ばす要素はラケットを動かす距離ではない。

テニスはラケットを使ってボールをコントロールするため、最初は「ラケットをボールに当てて飛ばす意識が強く出たフォーム」になります。おっかなびっくりラケットを振る人も、強く打とうと力を込めて振る人も「ラケットをボールに当てる」意識は同様です。

「ラケットでボールを飛ばす理屈」を理解しないまま実践の中でボールを打つ事から始めると、強く大きく振ることがボールを飛ばす要素だと思いやすいです。普段こわごわラケットを振る人でも「強く打ってみて!!」と言えばラケットを大きくテイクバックしてボールを打とうとするはずです。

ただ、以前に確認した通り、ラケットがボールに与える運動エネルギーは「1/2xラケット重量xスイングスピード^2 (2乗)」です。ラケットを大きくテイクバックしてもスイングスピードが速くならなければボールに伝わる運動エネルギーは増えません。ラケットの運動エネルギーはボールスピードと回転量に相対的に分配されるのでスイングスピードが上がらなければ、ボールの速度も回転量も増加しないです。

ラケットを大きく引くテイバックは腕の動きを中心にしたもので、体から離れたラケットを加速させるには大きなエネルギーが必要ですが、最初の引き寄せは腕の力で行うしかないので腕の力だけでは十分加速させられません。

つまり大きくラケットを引いてテイバックするのはボールを強く飛ばすことに繋がりにくい状態を自分で作っている訳です。



2.強く打たないとボールが遠くに飛ばせないわけではない。

ベースラインからネットまでが11.885m、相手側のベースラインまでは23.77mの距離があります。実際ボールを打つ際、ある程度強く打たないと相手コートの奥側まで届かないように感じます。また、最初はラケットにボールを正確に当てられないのでボールも飛びにくく、尚更強く打たないとダメだと思ってしまいます。

ただ、今のラケットやガットはボールを楽に飛ばせるようになっており、地面と垂直に近くボールを打ち出せば重力もありかなり速度がないと相手側ベースラインまで届きませんが、大砲の弾道計算と同じく、打つ際の打ち出し角度を上げてやることでボールの打ち出し速度はそのままでもボールの飛距離を上げることができます。野球で言えばライナーでホームランを打つのは難しいですが山なりの弾道なら届いてしまうのと同じです。速度と飛距離は同じではないということです。

http://www.l2i.org/slingshot/Sub_03/BallisticTrajectory.jpg


スイング速度が上げにくくボールに正確に当てづらい初心者の段階だからこそ、ボールを打ち出す軌道を上げ、その打ち出し軌道に対し垂直のラケット面で真後ろからまっすぐラケットを当てることが大事です

f:id:a-londenion:20160413155240j:plain


スクールでは初心者の段階から、スピンをかけるために打ち出す軌道に対して下から上にラケットを振るように教わりますが、これには「ボールを正確に捉えにくくする要素」もあります。

テニスラケットは打ち出す軌道に対して真後ろからまっすぐ当てて角度はズレても5~6度の範囲でないと正確にボールを捉えらないと言われています。下から上にラケットを大きく動かしながらこの角度を作ることは簡単ではありません。始めはストロークスピードも遅いので無理にスピンをかける意識より、まずは打ち出し角度に対し垂直にラケットを当てフラットに山なりの軌道を正確に作れることを実感することが大事だと思います。打ち出す方向に向けて真後ろから90度の面で当てると考えればやりやすいはずです。


3.ボールが飛ぶ方向やボールの種類を決めるのはインパクト

最初はラケットの操作でボールをコントロールしようとする傾向が強いです。「ラケットでボールを運ぶイメージでといった表現もありますが、まず、「ラケットがボールに影響を与えられるのはボールに触れている間だけだ」という点をきちんと理解すべきです。


ボールに当たる瞬間であるインパクト時間は0.004秒位だと言われています。当たる前、当たった後はボールに接していませんから、どんなにラケットを動かしても物理的にボールに影響を与えることはできません。つまり、「インパクトではボールを打ち出す方向(打ちたい方向)にラケット面が正しく向いている」必要があります。加えて、回転をかけるなら面の向きに合わせて「接しているボールに対して部分的に片寄った形で力を伝える(スピンなら上側が強い)」必要があります。

ラケットをスイングするのはボールに伝える運動エネルギーを作るためです。当然、インパクト時のラケット面の向きや角度はスイングの中で作らないといけませんが、手や腕の操作でスイング中に「ラケット面を作ろう」とすると安定して面を作ることができません。(ボールに当てるのが精一杯で0.004秒のタイミングで面がどこに向いているか意識することは不可能ですから) 

初心者の方に「インパクトに集中して」と言うとスイングを止めてしまったり面を作ろうとぎこちないスイングになったりするので、スイングの中で自分で意識的に作れないインパクト面を意識するなんて意味がないと言う方もいます

これらについては「ボールに物理的に影響を与えられるのはボールに触れているインパクトの間だけだ」という事実をきちんと理解すること。次に「スイングの中でラケット面の向きを安定的に作るのは腕や手による意図的な操作では無理だ」という2点を理解することです。

「腕や手の操作でラケットを振らないってどういうこと?」と思われると思いますが、「体の上手な使い方」に関することでテニスで安定してボールをしっかり打つには不可欠な事柄です。人の体は末端の筋肉や関節ほど繊細に動きますが同じ動きを安定的に行うには向きません。体の大きな筋肉や関節はミリ単位の繊細さはありませんが大きな力を安定して発揮させるのに向いています。ゆっくりとしたボレーで僅かな面の向きを作るには手の操作が必要ですが、ストロークやサーブ等は手や腕ではなく体全体を使って打つ方が安定して打つことができます。力まず、体をブラさず、リラックスして打つ事です。ここでは細かく書きませんがショットの内容によって体の使う部位を変えていくことは人が持つ調整能力なので理屈が分かれば自然と行えるようになります。意識して切り替えるような事柄ではないことも重要です。

正しい体の使い方を身につければ腕や手による意図的な操作は必要なく安定してしっかりとボールを打てるようになり、インパクト時の面の向きが安定するのでミスも防げます。インパクト面は作るものではなく自然と出来るものと言えば矛盾に感じないでしょうか。


4.ラケットは長い距離を動かすほどボールに当たりづらくなる。

1m先の針の穴に腕を近づけながら糸を通すのが困難なように、テイクバックから打点までラケットが動く距離が長くなるほど正確にボールを捉えるのが難しくなります。ボレーの基本が動かさない止めた状態のラケットで打つことであることからも分かると思います。(野球で一番ボールを当てやすいのはバントですね。) 大きなテイクバックを取る人はボールに当てにくい状態を自分で作っているわけです。

仮にテニス経験のない人に手っ取り早くストロークラリーをやらせるなら、できるだけラケットを引かず、打ち出す角度に向けた上向きの面でコンパクトなスイングだけでフラットで山なりのボールを打ってもらいます。

ラケットを使ってボールを上に突き上げる練習をしたことがある方は「大きくラケットを動かさなくてもボールに当たる際に瞬間的に強く力を加えれば、10m以上打ち上げられる」ことは想像がつくのではないでしょうか。

ボールを突き上げる練習

youtu.be


前述の通り、ボールに伝わるラケットの運動エネルギーは「1/2xラケット重量xスイングスピード^2 (2乗)」なので、大事なのは動かす距離ではなくラケットのスピードを上げることです。つまり、スイングスピードが上げられるなら、よりボールに当て易いコンパクトなテイバックの方がいいということになります。

そのためには「体をうまく使ってボールを打つ方法」を理解する必要があります。

それらを理解していない人のテイバックは「手でラケットを引いて作るもの」になるので、そのまま手の操作で「小さなテイバック」を作ることは意味がありません。多少ボールに当たりやすくなっても、それは腕の引き方の差に過ぎないので、日によって或いはその時の精神状態によってテイバックの大きさが簡単に変わるでしょう。

理解すべきは「テイクバックから打点までの距離の問題」で「小さいテイバックを意図的に作る」ということではないということです。因みに体に近い位置から瞬間的にラケットを加速させて打つのが現代的なフォアハンドの打ち方になっています。



5.ボールを良く見てというのは子供向けのアドバイスではない。

テニスでもボールを良く見て打ちなさいと言われます。これはボールから目をそらすなといった子供に言うような注意事項だけではありません。動いているボールの位置や移動速度を把握するのはほぼ唯一両目からの情報だけなので、ボールを追って移動する間、ボールを打っている間に頭や体が動いてしまうとそれだけでボールとの距離感、自分が狙っている場所の距離感が分からなくなってしまいます。

初心者の方がボールを追いかける際にバタバタと上体を揺らしながら走ったり、ボールを打つ際に姿勢や軸が倒れる形で打ってしまったりすることはよくあります。例で言うと直立した状態でボールを投げられれば簡単にキャッチできますが、ヘッドバンキングをしながらではキャッチできません。

人の頭はボーリングのボール1個程の重さがあり、上体は全体重の60%もあります。移動する体を支えるのは両足なので、移動する際やボールを打つ際も両足の幅(スタンス)の間に頭や上体を納めておく必要があります。

また、「打ち負けないように体重移動して打つ」と言われることがありますが、この結果ボールを打つ際に頭が大きく動けば、飛んでくるボールに当てるのが難しくなります。ボールを打つ際に頭の位置をできるだけ動かさないで打った方がボールを捉えやすくなるのは理解すべき事柄です。これも前述の体の上手な使い方と関連しますが、大きな体重移動をしなくても強いボールを打てる方法があります。現にトップクラスのプロテニス選手を見れば、皆、強くボールを打っているのに頭の位置が動かないのが分かります。ボールをより正確に捉えるために頭を動かさない打ち方をしているからです。(体重移動は体を回転させる中で両足のスタンスの幅の間で行われています。)


後、フェデラー選手がボールを打ち終わっても打点を見続けていることはよく言われますが、それ以前に、ボールを追う際もボールを打つ時もフットワークをうまく使って頭の位置が上下左右にブレません。常に顔の正面でボールを捉えて両目でボールを見ています。フェデラー選手のようなトップ選手でも実践していることですから大事であることは明らかです。

youtu.be



6.軽いラケットは初心者や女性用でボールに打ち負けるというのは正しくない。

一般に「重いラケットは打ち負けない」「軽いラケットは打ち負ける」と言われます。ただ、前述の通りラケットからボールに伝わる運動エネルギーは、1/2 x ラケット重量 x スイングスピード^2 (2乗)ですし、ボールの重量は約60gで飛んでくるエネルギーも考えるとラケットが20g軽くなったからといって急にボールに打ち負ける事象が発生することは考えにくいです。また、ラケット重量が軽くなれば運動エネルギーは減る訳ですが逆にラケットが軽くなったことを利用してスイングスピードを上げて運動エネルギーをより増やすことだって全然可能です。

一般に言われる「軽いラケットは打ち負ける」というのは、重い320gのラケットと軽めの270gのラケットが同じラケットシリーズの中にあることはあまりなく、構造や作りの違うラケットで比較した経験がイメージや通説として残っているからです。320gあるラケットはフレームが薄めでしっかり神経を使って打たないと飛ばないものが多いし、270gのラケットはフレームが厚めで楽にボールを飛ばせるし取り回しがよいことが余計な操作ができる分(少し雑に打てたりして)ボールを正確に捉えきれない事、或いは昔の軽いラケットは重いラケットより構造や素材に違いがあった(当然飛び方や振動も違う)事などからこういったイメージが一般化したのではないかと個人的には思っています。

実際ボールを打つ前から軽いラケットを手に持つだけで「打ち負けそうだ」と自己暗示してしまうのがいい例です。

 

7.ボールが飛ばない、速度が出ない理由は筋力や運動能力ではない。


これも体の使い方の問題です。プロ選手のように120~130km/hのストロークを打ち合う訳でもないし150km/h超のウイナーを決めないと勝てない訳でもありません。競技者の方はともかく、少なくとも初心者から中級者位のスクールで練習をされる方のレベルであれば、一般的な人間が持つ筋力の範囲で十分な速度のボールを打ち合うことができるはずです。力を込めないと強く打てない、周りの人よりボールの速度が遅い、回転もかからないのは、恐らく体の使い方を理解できていないだけです。

野球経験のない人ならマウンドからボールを投げても速度が出るどころかホームベースまで届かないことも普通でしょうが、ボールの投げ方や体の使い方を理解するだけで女性でも100km/h超のストライクを投げ続けることは全然可能です。これは体を鍛えているから筋力があるからとは違う次元の話です。自分よりはるかに体の細いジュニアや女性選手が自分より段違いに強いボールを軽々打てるのは、鍛えているから、技術があるからだけでは説明できないでしょう。

長くテニスをやっている人でも強いボールを打ちたいからと筋トレや体幹トレーニングをやりたいと言われますが、もっと基本的な部分で自分の持てる力を活かせていないことは往々にしてあります。

運動経験がない人でも、体格や筋力のない人でも、日常生活が普通にでき、軽く走ったり投げたりできる位の体力でも110km/h超で回転のかかったストロークを打つことは問題なくできると思います。大事なのは効率よく安定した体の使い方で、無理がないからミスもしづらいし疲れにくい効果もあります。50~60%の力で十分速いボールが安定して打てる方が間違いなくよいはずです。


8.まとめ的な感じ

全般まとまりがない感じになってしまいましたが、「ボールが飛び回転がかかる理屈とラケットとの関連性」「体をうまく使い安定したまま楽に力を発揮する方法」「ミスを発生させる理由と減らす方法」など、理解し実践できるだけで知らない人とは「そもそもの根本から」違ってきます。ただ、これらテニスで大事になる基礎的な事柄や理屈はスクールでも教わる機会はありません。

今回挙げた事柄はごくごく序盤の理屈にすぎませんが全て本質に繋がっています。テニスを続けていきたい、ミスせず楽しくやっていきたいと思うのであれば、こういった内容を理解した上で、練習を通して技術を磨く方が上達に遠回りするリスクを減らせると思います。スクールに通う多くの方が本来は要らない遠回りを経験していると思っています。

 

follow us in feedly