lond日記

思ったことを気まぐれに書きます。

コンパクトに打つ、遠心力で打つ (テニス) (テレビ)

先日、某スポーツ系番組で「野球におけるコンパクトなバッティングとは?」という疑問に対し元プロ野球選手の3人の解説者の方がそれぞれの考えを説明されていました。ただ、結論で言うと「コンパクトなバッティングはトップからインパクトまで(ボールに到達するまで)の角度が違う」という感じで、他に「バットの遠心力でボールを飛ばす」という表現もされていました。

今まで常識とされてきた表現を理論的に見直すという企画ながらプロ野球選手の説明にによく感じる「感覚的な」表現の範疇だと思いました。専門家も出演されているのですが殆ど話されない所を見るに、解説者さん達の話を優先させる都合で専門家の説明がカットされている、或いは専門家の先生が指示か自主的に補足を遠慮しているのではないかと思ってしまいました。

道具を使ってボールを打つという点ではテニスも野球も同じです。番組を見て少しがっかりしたので「コンパクトなスイングとは何か、遠心力で打つとは何か」について少し考えてみたいと思います。


まず、ラケットは腕に持つので体及び肩を中心とした円軌道の中で動いていきます。手首や肘の関節を柔軟に動かすことで部分的に直線的な軌道を作ることができますが、最終的には軌道は肩関節や体の影響を受けます。

続いて、円軌道で動く物体は中心からの距離(半径)が遠くなるほど「動きづらく」且つ「止まりにくく」なります。ひもに繋いだオモリをぐるぐる回す際、半径が長くなるほど回しづらく速度も上げづらいが一旦回ると止めづらい。逆に半径が短くなるほど簡単に速度が上げられ、簡単に止められるのは分かると思います。これを、慣性モーメント(回転のしにくさ、回転の止めにくさ)と呼ぶようです。ゴルフ等でよく聞きますね。素人ですがこの辺りは「慣性の法則 (止まったものと止まり続けようとするし、動くものは動き続けようとする)」に通じるように思います。

慣性モーメントは、「慣性モーメント= 質量 * 半径^2 (半径の2乗)」で得られるそうです。

つまり、テニスでも野球でも「構えからテイクバックしたラケット(バット)は体に近い位置から振り始めた方が加速させやすいが、スイングする中で「止まりづらく」する方がボールを強く打てるので、加速に伴いラケット(バット)は体から離してくほうが都合がよい」と言えますね。

公式によると、
運動エネルギー = 1/2 * 慣性モーメント * 角速度^2(角速度の2乗)
角速度= 速度 / 円の半径
慣性モーメント = 質量 * 円の半径^2(半径の2乗)
運動エネルギー = 1/2 * (質量 * 円の半径^2) * (速度 / 円の半径) なので、
1/2*(2*3*3)*(2/3) = 6、1/2*(2*6*6)*(2/6) = 12のように半径が2倍になれば運動エネルギーも2倍になるようです。

これは半径が2倍になれば円周も長くなり "同じ時間" でその長い距離を移動するなら当然そちらの方が大きなエネルギーが必要となるためです。逆に言えば同じ時間でその距離を移動させることができないなら、速度が下がっている訳で、その分、運動エネルギーは下がります。(バットを長く持つ事でスイングスピードが下がる状態)


ラケットよりも重量があるバット(約1kg)の方が加速させづらい訳で、実際バッターは、体の近い位置に構えたバットを体に近い所を通して振り始めバットが加速する中で次第にヘッド側が体から離れていってボールにインパクトするのがわかります。

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バットほど顕著ではないですが、ラケットも同様の軌道をたどる方が望ましいと言えます。腕で引くタイプのテイバックの方はラケットが体から離れてしまい、振り始めに一旦体にラケットを近づけないと加速させづらいです。腕の操作で引き付ける訳で、そこから体を使ってラケットを加速させるにしても、この操作が無駄になります。

youtu.be


円軌道で動く物体はその半径が長くなる程、同じ角度を動かすために軌道上の移動距離が長くなります。よく知られる公式「距離 = 速さ * 時間」 から「時間 = 距離 / 速さ」なので(加速分を考慮しても) スイング速度が同じであれば、ラケットが体から離れてその移動距離が長くなるほどボールに到達するまでの時間がかかります。


つまり、「コンパクトなスイングとは、同じように体の近くから振り始めたバット(ラケット)でも、それをできるだけ体から離れないようにスイングすることで、加速までの時間を短く、且つ、ボールに到達するまでの時間を短くする打ち方」と言えると思います。TVで言われていた「トップからインパクトまで最短距離」「その際の角度が違う」というのも同じようなことを言いたいのだと思いますが、距離が短い、角度が鋭いでは、多分に「イメージ的な表現」で説明を聞いても違いがよく分からないだと感じました。

もうひとつ「遠心力でボールを飛ばす」という表現です。
これも野球ではよく聞く表現ですね。(テニスでもたまに耳にします。)

以前に書いたように物理学では「遠心力」とは仮定の力(みかけ上の力?)だそうです。

lond.hateblo.jp


ひもに繋いだオモリを回す際、オモリは円軌道を回り、ひもを持っている自分は外向きの「遠心力」を感じると言いますが、動き出して加速を得たオモリは「本来、慣性の法則でまっすぐ進む所を、ひもに引っ張られてその向きを絶えず変えさせられている」と考えられます。

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この動きのため、オモリは円の中心に向かって加速していると考えることができ、加速する向きと力の向きは同じになりこの力を「向心力」というようです。

また、「作用・反作用の法則」力には同じ大きさの逆向きの力が働くのでこの「向心力」と反作用の力がひもにかかり、それが中心から離れる方向に働くのでひもが引っ張られる力として「遠心力」が感じられるようです。


つまり、この外向きの力「遠心力」と「物体の加速」は別ものということです。

ただ、「ひもに繋がれた物体が加速して行けば周回スピードが上がり遠心力も増加する。周回スピードが上がれば運動エネルギーも増すのでボールが当たった際の飛距離も増す」ということは言えます。

また、「遠心力」は、動き出したものはそのまま動き続けようとする「慣性の力」と言えると思うので、ずっと動き続けようとする力は軌道の安定に繋がります。

要は、物体の加速によりボールに伝わる運動エネルギーが増すわけですが「遠心力が加速に貢献しているわけではない」点に注意です。スイング軌道を安定させる要素として遠心力を考えるのは正解だけど、『物体(ラケット・バット)を加速させているのは自分自身』ですからね。


このためTV番組で「バットの遠心力でボールを飛ばす」と言われた時に「あぁ、野球の常識を論理的に覆す企画と言いつつ、その説明される解説者も、多くのプロ野球選手同様に自身の経験を中心に感覚的に話されている(物理などに基づく知識は持たれていないのかな?)」と感じたものです。

わかりませんが、野球をやれれる方で少し詳しく調べられている方はこのような事は十分承知だと思いますね。(もちろん殆どの方はそういった事を気にされることもないのでしょうが。)

逆に、テニスにおいてはこういう説明を聞くことはあまりない気がします。基本的な物理的の理解があるだけでテニスに関する理解がだいぶ変わってくるんじゃないかなと思います。