lond日記

思ったことを気まぐれに書きます。

ボールを強く打つ要素 - 正確にボールを捉える (テニス)

考え方も色々だと思いますが、個人的に ボールを打つ事について重視する基本要素は以下の3つに絞られる かなと思っています。

1)ラケットで正確にボールを捉える
2)ラケットスピード
3)ラケット重量

以前に考えた通り、ボールに伝わるラケットの運動エネルギーは「1/2 x ラケット重量 x スイングスピード^2(2乗)」と考えられます。

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おさらいすると..

「スイングスピードが速いほど、ラケットが重いほどボールに伝わる運動エネルギーは大きく」
なります。


「ラケットからボールに伝わる運動エネルギーは "ボールスピード" と "回転量" に分配され、(ラケットの重さは固定なので) スイングスピードが速いほど相対的にこれらを増やせる」ことになります。

「同じスイングスピードで振れるならラケットを重くする意味はある。逆に軽くしてスイングスピードの方を上げることで運動エネルギーを増やすアプローチもある」と言えます。


ただ、最初に上げたように、ラケットの運動エネルギーをボールに無駄なく伝えるにはもうひとつの要素である
「正確なインパクト」が必要になるのですが、ラケットを強く速く振ることには誰もが意識が行くものの、一般には

「正確にボールを捉えることは技術的問題 (うまくなれば改善されるもの)」

という認識だと思います。


この点について、個人的には少し違うと思っていて、

「ボールを正確に捉えるための要素こそ初心者の内に身につけるべきで、それは "テニスの技術レベル" とは異なる基本的なもの」


だと思っています。

ただ、残念ながらスクールではこれらを十分教わりません。フットワークやボールを打つフォームの中に包括されるので、誰もそのことを「要素として認識できない」感じです。

テニスを始めて間もない方もプロと同じような体の使い方でボールを打つべきで、筋力や技術、経験の差があったとしても両者の打ち方が全然違う、或いはレベルが上がればフォームも良くなると考えるのは変じゃない?と思っているわけです。これはアマチュアのゴルフキッズとプロゴルファーのドライバーショットの打ち方が変わらないのと同じことです。


前置きが長くなりましたが、今回は正確にボールを捉えるための要素を考えてみようと思います。


個人的に、正確にボールを捉える要素としては、以下のようなものがあるのかなと思っています。

[正確にボールを捉える要素]

a.ボールに先回りして待ち構え、止まった状態の正しい姿勢でボールを打つ

フライを追いかける外野手が基本、落下点に先回りして待ち構えてキャッチするように、テニスも、ボールを追いかけて移動しながら、体を動かしながらボールを正確に捉えることは難しくなります。

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このことは「フットワーク技術」の要素はありますが、殆どの人が考えがちな「足の速さ」の問題 (運動が苦手、足が遅いとうまくできない) はありません。

相手を見て飛んでくるコース、球速、球種を予め予測し、相手が打った瞬間に予測を元に動ければ、飛んでくるボールを見てから移動するよりもヒッティングゾーンには1秒以上速く到達できます。加えて、自分がボールを打つ際はそのボールを相手がどう返してくるか予測すれば更に次に自分が進むべき場所の範囲を仮定することができます。前方の交差点の信号の動きを見て渡ろうとする横断歩道がもうすぐ赤になりそうか判断することは皆ができます。今走れば間に合いそうなら走ることもするでしょう。そういったことです。

フットワークの要素で言えば、初心者が教わる「パタパタとした細かいステップ(スモールステップ)」より歩幅の広い「ビッグステップ」でボールに近づく方が速く移動できます。余裕があればスモールステップで位置を調整してもよいですが、次のボールを追いかけることを考えればビックステップから直接打てるようにした方がよい場合が多いです。また、足の付き方、動かし方などバランスを保ちながら速くボールに到達できる要素は色々とあります。

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この辺はきちんと理解して練習すれば誰でも実践でできるようになります。


b.飛んでくるボールを打ち終わるまで常に両目で見続ける
テニスでも「ボールをよく見なさい」と言われますが、ここで言うのは「見る見ない」の話ではありません。打ち合っているボールの位置を認識するのはほぼ両目からの情報だけなので、顔をしっかり向けて顔の正面かつ両目でボールを見続けることが大事です。ボールを追いながら片目で見たり体の軸が傾いたり頭が倒れてたりすると、飛んでくるボールとの距離感も、そのボールを打つべき場所の方向や距離、角度も正確に把握できなくなります。

例えば、フェデラー選手は常に体の軸を倒さないように移動し、顔の正面でボールの位置を捉え続けます。よい悪いは別としてインパクト及びインパクト後までボールを見続けています。これらは全て正確にインパクトするためです。

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テニスよりも小さいボールを小さいクラブヘッドで打つゴルフは、ボールを遠くに飛ばすことよりもまず正確にインパクトできることの方が何十倍も重要です。ゴルフではテイクバックからインパクト、フォロースルーに至るまで頭を動かさずボールを見続けなさいと言われます。

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テニスでも「常に顔の正面でボールを見続ける」意識で正確さ(結果的に体のバランスも)が変わってくるはずです。

c.体の軸と頭の位置を動かさない
人の頭の重さは体重の10%程度でボーリングのボール1個分程あります。また上半身は体の60%の重さを占めます。人は直立しており体を支えているのは両足なので、両足の歩幅(スタンス)よりも外側に上体及び頭が出てしまうだけで重心が傾き、簡単にバランスを崩してしまいます。バランスが崩れると頭が大きく動き正確にボールを捉えることができなくなるので、ボールを追いかける全ての場面で、両足の歩幅の間に体と頭を位置しておく必要があります。

「上体からではなく足から移動する」とか「テニスは足ニスだ」と言われることもありますが、特別難しいことではありません。人は日常生活で体のバランスを取る機能は十分持っているので、「バランスを崩さないよう体や腕ではなく足を使ってボールに近づく」練習をすれば大丈夫です。また、上でも書いた速い判断やフットワークの練習が「咄嗟の際に足をもう1歩踏み出す」ことに繋がると思います。

日比万葉選手のフットワークのイメージトレーング

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※ b、c の頭や軸を動かさないことについて、言い方を変えると「頭や軸を動かしながら打つ打ち方ではなく、頭や軸を動かさずに且つスイングをより上げられる打ち方があるなら、正確にボールを捉えて強いボールを打てる」ということになります。それが現代的なフォアハンド等が目指すところです。


d.体や腕に力を込めない
いわゆる「脱力」です。意識しなくても手に持つラケットという道具でボールを打つという特性上、ラケットを強く振ろう、ボールを叩いてやろうして力が入ることを防ぐことは難しいです。ただ、筋肉の緊張は正確性を下げスイングスピードも低下させることになります。

目指すべきは言葉通り「力を入れないようにする」ということではなく「加速を始めたラケットが動いていくのを邪魔しない」ようにするには? という意識だと思っています。

以前にご紹介した「3本の指で輪を作りラケットをひっかけてスイングする」練習などを通じて、ラケットにかかる遠心力を感じながらラケットが進んでいく通りにその動きを邪魔しない打ち方がポイントになります。

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加えて、遠心力はラケットの加速に貢献しないので、ここで得られる「軌道の安定性」に腕や力を込めるのではない体を使ってラケットを加速させる要素を加えていくと、安定と加速の両方を得られます。(この要素とは体の使い方そのものなので「コツ」の類ではありません。極端ですが腕の動きだけでもコンパクトにラケットを加速でき、それは「手打ち」とは異なります。)

 

e.ラケットをボールに当てにいく操作をしない
腕に持つ道具を的に当てようとする操作を強く速く振るという意識の中で行うのは困難です。速度が遅ければまだしも速ければより操作しようと筋肉の緊張が起きます。"d" の力を込めないと同様に、体の使い方によりラケットが加速していく状況を邪魔せずスムーズに移動させることで結果安定したインパクトを作ることが必要です。同様に「脱力」ですが「力を入れない」という意識では実感できません。ラケットを操作して当てるのはボレー等のタッチショットのみでスイング系のショットでは向きませんね。「操作する・操作しない」の違いを実感できるようになることは難しいのですが、これが理解できるだけでテニスのレベルが勝手に上がる位だと思います。



f.テイクバックからインパクトまでのラケットの移動距離を短くする。
1m先の針の穴にいきなり糸を通すのが困難なように、テイクバックから打点まで、ラケットが移動する距離が長くなるほど、ラケット軌道のブレが発生しやすく、正確に当てることが難しくなります。これはフォアだけでなく全てのショットで同様です。

加えて、体(肩)を軸とした回転運動でラケットは動くので、体からラケットまでが遠くなるほどラケットを加速させづらくなります。(半径が長くなるほど物体の移動距離は長くなり加速にパワーが必要となる)  つまりボールを強く打つにはテイクバックしたラケットを体に近い距離から瞬間的に加速させる方がスピード感の高い現代テニスにマッチします。ただし、打ち方を変えずにテイバックだけを小さくするのでは答えになっておらず、体の使い方によってテイクバックをコンパクトに且つラケットを急加速できる打ち方にすることが重要です。

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初心者に近い方ほどラケットを大きく動かしてボールを飛ばそうと考えますが、むしろよく飛ぶラケットを利用してコンパクトなテイバックから瞬間的に加速させる方が、正確に当たりやすく威力も出ます。腕の操作ではなく体を使ってスイングしているので急加速させても軌道はブレません。また、これには振り遅れも防止する効果もあります。(時間のないリターンでも同様ですね。)


つまり、腕でラケットを引くテイバックではなく、多くの男子プロが行うオープンスタンスで上体を捻った位置がテイバックとする打ち方はラケットの特性もあり非常に合理的な打ち方なのです。


g.ボールの後ろからまっすぐスイングしていく。
原則としてボールはインパクトにおいてラケット面が向いている方向、角度に飛んでいきます。これに回転という要素を加えるにしても、ボールとラケットが接している時間は0.004秒しかなく、その前後のボールに触れていない時間にいくらラケットを動かしてもボールに影響を与えることはできません。

回転をかけようとラケットを「J」の文字のように急激に持ち上げたり、少し極端に下から上に振ったりしますが、ボールを正確に捉える(厚く当てる)ためには「ボールを打ち出す角度に対してその真後ろからラケットを当てること、当たる角度はそこから5~6度の誤差に収める」と言われているようです。それ以上に角度を付けたスイング軌道では安定してボールを捉えられないのは当然です。

ラケットをボールの真後ろから当てても、下から上にこすり上げても接している時間は同じ0.004秒なはずで、目指すべきはインパクト時にラケットでボールをしっかりと厚く捉え、ボールが大きく変形してガットに喰い付く(設置面積が増える)中で、ガットからボールに伝わる力を「部分的に強く(スピンなら上側に強くする)」して回転を発生させることだと考えています。(0.004秒経過後にはガットから離れます。)

http://ffden-2.phys.uaf.edu/webproj/211_fall_2014/Max_Hesser-Knoll/max_hesserknoll/Images/TennisBallRacquetImpact.jpg

「ボールを飛ばす前向きの力」と「回転をかける上向きの力」で考えれば、相手コートまでボールを飛ばすためには前者の方が大きくないといけないのは想像が付きますね。

下から上にラケットを振っても、ボールをガッつり変形させる厚い当たりの中で伝わる力に上下を付けても同様にスピンはかかると思います。前者は回転量は多いけど安定しにくい、後者は回転を増すにはヘッドスピードが必要だけど前に強く飛んで行くスピンという感じでしょうか。

ナダル選手のストローク

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ナダル選手のフォアを見ても、インパクトでラケット面が向いている方向はボールを打ち出す角度に対して後ろからまっすぐで、インパクト前後では下から上に振るような軌道でありませんね。世間のイメージと実際は結構違うものです。


まとめ的なこと
トッププロがボールを打っている様子を見れば今回挙げたどの項目も当たり前のように行えていることだろうと思います。ただ、これらはプロに限らず、テニスにおいて(大きく言えば日常生活でも)基本的な体の使い方や動作であり、テニスの経験や技術とはまた別のものなはずです。日常的な動作の応用であり、これをテニスの中で実践できればボールをより正確に捉えられ、ムダもなくラケットの力をボールに伝えることができるようになるでしょう。