読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

lond日記

思ったことを気まぐれに書きます。

ラケットとボールのインパクト時の要素を考える (テニス)

テニスにおいてボールに影響を与えられるのは唯一ラケットに張られたガットがボールに接触している間だけなので、道具がどうこうフォームがどうこうと考える前に、ガットとボールが接触している間に何が起こっているかを理解しておくことも大事かなと思います。

今回はラケットとボールのインパクト時の要素について考えてみます。

最初に、物理では、運動エネルギーは「1/2x質量x速度^2(速度x速度)」で求められるそうです。テニスで言うならボールに伝わるラケットの運動エネルギーは「1/2xラケット重量xスイングスピード^2」となるでしょうか。(なぜこういう計算式になるかは専門の解説でご確認ください。)

この他にボールがラケットに当たった際に影響しそうな要素としては、ラケットのしなりとその復元、ガットの伸縮、ガット同士のズレ、ボールの変形とその復元等々がありそうですが最初はこの辺りから考えてみます。

動画: Slow Motion Tennis Swings

youtu.be

こちらのハイスピードカメラによるサーブやストロークのインパクトを検証した動画を見ましたが、変形と復元の割合で大きい方からみると「ボール >>> ガット > ラケットフレーム」の順かなと思います。ボールの変形率は極めて高く、ボールが直接触れるガットは伸縮しているでしょうが、ラケットの方はボールが完全に離れた後に復元している位(遅い)なようです。また、ボールが当たった際にフレーム自体が歪むためか復元する際に振動しているのもわかります。(これが手に伝わる振動ですね。)

推測ながら、ラケットが当たるエネルギー量により変わるとしても中に空気の入っているボールは必ず変形するので、単純にボールスピードを上げる方向で効率よく力を伝えるには、ガットとラケットは変形しにくい方がロスが少ないだろうと思います。(コンクリートに当たるとよく跳ね返るのと同じ) 極端ですが金属の板のようなものでボールを打てればボールスピードはかなり速くなるということで、現に近年各メーカーが出すラケットはカーボン素材等を使いフレーム構造を変形しづらく設計することで「フレームを硬く」「ラケットパワーを出す」ものが多くなっています。

動画のようにフレームのしなりが復元するのがボールが離れた後だとすれば、フレームが薄い「しなるラケット」はボールが触れている間は "しなりが増すばかり" なのでボールを反発させる力が逃げることでフレームが硬めのラケットより「飛ばない」のは理解できますね。また、しなりが大きく復元まで時間がかかるのを球持ちの良さ」「ボールを掴む感じ」と感じるのでしょう。実際ボールが触れている時間(0.004秒)は変わらないでしょうから、単純に「打感」「感覚面」だけの話 (球持ちの良さ = コントロール性というわけではない) いうことでしょうか。



一方、テニスには回転の要素があり、無回転に近いボールではコートに収まらないのでわざとズラした当て方をすることで「スイングスピード」を「ボールスピードと回転量」に分配してボールに伝えます。

ラケットとガットがボールに影響を与えられるのは接触している0.004秒の間だけで、その前後の触れていない時間は影響しません。つまり、ガットがボールに触れてから離れるまでの間にガットがボールに噛んで回転する力を伝える必要があります。鉄板のような平らな接触面では回転を発生されるための「力のかかり方の部分的な偏り」が発生しないので、ガットがボールを噛むためにガットが伸びる、もしくはガットがズレる要素が必要になります。

最近流行りのガット本数が少ないラケットがありますが、16x19などの一般的なラケットでもボールが当たった部分のガットの格子が広がり、部分的に目が荒くなる現象が起きていると思います。

動画: Wilson Spin Effect Technology

youtu.be

これはWilsonのSラケ検証の動画でラケット面を滑るようにボールを当てて効果を過大に見せていますが、通常のストロークでは普通のラケットもズレて広がる効果は変わらないと思います。そうでないと16x16と16x19を比べた際の回転性能差がさほど大きくない説明が付かないです。

また、0.004秒の間にガットがズレるためにはガット同士がある程度滑る必要があります。ただし、ガットを緩く張りすぎてしまうとズレたまま復元せず力が逃げてしまうので、自身のスイングスピードに応じて、ボールが復元し始めてガットから離れる瞬間、ガットにかかる力が弱まるのでそれと同時に伸びた分が縮み、ズレが復元する必要があると思います。

なお、よくスピンがかかりやすいガットとして断面が丸ではなく、多角形(3~5角形)のガットがありますが、スパイクシューズのように長い時間、またスパイクタイヤのように広い面積で地面を捉えるのとは異なり、0.004秒の間にボールがその突起に噛む効果は限定的だと思います。むしろガット同士がすべりやすくなる副産物的な効果の方を注目した方がいいのではないかとも思います。


ボールに影響を与えるという意味ではこの辺りだと思いますが、人がボールを打つわけなのでこれらに「打感」という要素が入ってきます。例えば、ラケットフレームの硬さと構造によるしなりと復元の度合いとスピード、ラケットの重量やバランス、ガットの縦横本数とか稼働に観する工夫、ガットの素材や構造、張りの強さなどでしょうか。実際の飛びには全く違いがなくても、ボールが当たった際に「打感が硬い 」と「打ちにくい」と感じたり、逆に「打感が柔らかい」と「ボールが飛ばない気がする」と感じたりします。

あくまで個人的にですが、ラケットやガットを選ぶ際に一番重視すべきなのはこの「打感」だと思います。ラケットやガットを変更、調整してもボールスピードや回転量は5%も向上しないはずで、自分の現時点での技量を最大限発揮させやすい、扱いやすい、ミスをしにくい道具を使って、いかにマイナスを起こさないかということが大切なはずです。(テニスのポイントの殆どは互いのミスで発生します。)


専門家ではないので「思う」ばかりの推測になっていますが少しまとめると、


1)シンプルにボールスピードを上げたいのであれば、ラケットやガットは硬く、できるだけ変形しない方がよいだろう。(ガットは素材及び張る強さ)


2)ボールに回転をかけるにはボールが触れた瞬間にガットが伸びる、ズレることでボールとの接地面積が広がる方がよい。ただし、ボールがガットから離れる際にガットにかかる力が弱まるのに合わせ、再び縮み、ズレが戻る復元性が必要。

3)道具を選ぶなら「打感」を含めて自分の扱いやすい道具が一番。伝聞や宣伝文句を頼りにあれこれ道具を変えるのはプラス面よりもマイナス面を生む懸念の方が大きいだろう。


続いて、よく話に上がる「ラケット重量」について確認してみます。

最初に書いた計算式で分かるように、ラケット重量が増えれば、それに比例してボールに伝わる運動エネルギーも増加します。

300gのラケットを110km/hでスイングした場合
1/2*300*110*110=1,815,000

320gのラケットを110km/hでスイングした場合
1/2*320*110*110=1,936,000

※重量増加割合と同じ6%増  (プロ選手のストロークのスイングスピードは通常時で110~120km/h程のようです)

ただし、これは300gと320gの各ラケットを同じスイングスピードで振れた場合です。300gから320gにラケット重量を増やすにあたりスイングスピードが110km/から105km/hに減ったらどうなるかというと。

320gのラケットを105km/hでスイングした場合
1/2*320*105*105=1,764,000

※300gのラケットを110km/hで振った場合よりも逆に運動エネルギーは3%低下する結果になります。

では逆に300gから280gにラケット重量を減らし、逆にスイングスピードが110km/から115km/hに増加したらどうなるかというと。

280gのラケットを115km/hでスイングした場合
1/2*280*115*115=1,851,500

※300gのラケットを110km/hで振った場合よりも運動エネルギーは2%増加する結果になります。

テニスでは「軽いラケットで打つとボールの威力に負ける、打ち負ける」と言われますが物理エネルギーに絞って見れば「ラケットを軽くする分スイングスピードが上がればボールに伝わるエネルギーは大きくなる」と考えれます。

テニスボールの重量は56.0g~59.4gであり、ボールが飛んでくる加速エネルギーも加わっていると考えれば、個人的には「ラケットが20g軽くなることで急にボールに打ち負けるようになるような変化が生じるとは考えにくい」と思っています。想像ながら、ラケット重量が軽い製品は重量バランスが違っていたり、元々重量が軽めのシリーズになるとラケット自体の構造も変わってくるので、それらを打ち比べた際の感覚が違いが重量差以上に「打ち負ける気がする」と感じさせるのではないでしょうか。(仮に280gのラケットの重量バランスを変えないようにして20gのオモリを貼っても「打ち負ける感覚」自体は解消されないと推測します。)


これらのことから「ラケット重量を軽くするとボールに打ち負けるから軽くしたくない」と考えるのは正しくはなくて、少しでも無理をして重いラケットを使う位なら扱いやすい重量のラケットを使って「重量を軽くする分スイングスピードを上げる」方がボール自体の威力も上がる可能性があるし、扱いやすい分ミスも減る効果も期待できます。(軽いラケット=未熟な人が使うものというイメージもありますからね。) 逆に問題なく振れる、扱えるなら重量を重くする選択もありです。

最後に、ラケットには「振り抜きの良さ」と言われるものがあります。これはフレームの構造や形などで変わるようですが、仮に「振りやすいという感覚的なものも含まれる」としても「振り抜きのよいラケットを用いて同じラケット重量でもスイングスピードを上げることでボールの威力を上げる」ということは十分考えられます。あまり話題に上がらない要素ですが、片手バックを打つ方なら「振り抜きの良いラケット」は具体的に違いを生むと思います。



follow us in feedly