lond日記

思ったことを気まぐれに書きます。

運動苦手でもテニスできますか? (テニス)

テニススクールに通い始める方の多くはテニス未経験者だと思います。軟式、硬式含め経験者は全体の1割もいないかもしれません。他のスポーツをやっていた方もいますがスポーツは殆どやったことがなく運動不足解消のために始めてみようと思ったという方もよく見ます。そういう方々がよく言われるのが「自分は運動が苦手だ」「運動神経もよくない」「テニスを教わって打てるようになるのか不安だ」といった言葉です。

このことについて思うことが2つあって、

1つはテニスは殆どの人が "普通に" 打てるようになれる」ということ

もう1つは「スクールに通うだけではうまくならない」ということ

です。


まず、「テニスはほとんどの人が普通に打てるようになる」ということについて。

テニスはラケットという道具を手に持ち、飛んでくるボールを追いかけ先回りし、自分が思った場所にラケットでボールを打ち返すスポーツです。ポイントが決まるまでそれを繰り返すので初心者がやってみると全部のことを一度にやってみるのは難しそうだし運動に自信のない人には出来るようになる自分が想像しづらいかもしれません。でも、テニスは難しいスポーツというわけでもありません。

日本テニス協会が毎年公開している「テニス人口等環境実態調査」の2015年度版に「年に1回以上硬式テニスをプレイする10歳以上の人口は399万人」とあります。日本人の30人に1人は年に1回以上テニスをしている計算です。(軟式テニスは別に261万人) この数は毎年350万人以上でずっと推移しており、それだけの人が継続してやっているスポーツがやる人を選ぶほど難しいはずがありません。

たとえ話ですが、日本人の多くが自動車免許を持っていて、運転に向いていなさそうなおっとりした人、運動が苦手そうな人でも問題なく運転ができるし、一般道でも高速道路でも普通に走れます。これは「自動車の運転が殆どの人ができるレベル」で設計されているためでもありますが、操作や判断が難しそうに見える車の運転も運動神経の良し悪しはほぼ関係ありません。


日常生活でも、「誰かに何か放られた時に手で受け止める」「歩いてきた人とぶつかりそうだからタイミングを見て事前に避ける」「横断歩道の信号が点滅を始めたのを見て足を早めて渡り切る」「重いドアでも体をうまく使って開けてみる」「買ってきた重い荷物を台の上に持ち上げて置く」こういったことは誰でもできると思います。テニスができるのに必要な能力はこれらと変わりません。プロ選手になるわけではないのでダッシュしながら何時間も集中して打ち合う体力も精神力も取り敢えず不要です。

テニスは、複数の動作を並行的に行う必要があり最初は混乱しますが、最初は極端なほどほどゆっくりとしたスピードで慌てずボールを打ち合えばよく、技術がない段階で「上手い人のように強く打ちたい」と力任せにラケットを振っても、ボールは正確に当たらず距離感や方向のコントロールもできないです。テニスのポイントの殆どは「ミス」で発生するため自分からミスする方が負けるようになっています。相手のあるスポーツでは自分のミスで相手にも迷惑をかけてしまいますから練習では安定が一番です。最近のラケットはゆっくり大きく振れば十分相手の所まで届きます。


次に、テニスというスポーツの状況についてです。テニスは長く世界中で続けられてきているスポーツですが、この20年ほどはスポーツ科学や運動学による研究や分析も進んでおり、既に「経験や勘を重視」「とにかく練習量」「根拠の薄い伝聞情報」で上達を目指すスポーツ ではありません。きちんと理解して取り組めれば殆どの人が一定のレベル(※)までは上達できるように知識や情報、学び方も整理されてきています。

※一定のレベルとは「ある程度のスピードでボールを続けて打ち合える、周りの人と普通にゲームを楽しめる」という初心者がまず目標にするレベルです。それ以上の競技者レベルは誰でもなれるわけではないですしスクールで目指すレベルでもありません。また、「殆どの人」と書いているのは様々理由で全員ができるわけではないという意味ですが、上にも書いたように運動が苦手といった自己評価とは無関係です。 


テニスを始めるというと、身の回りにある環境(スクールや部活)で仲間たちとやるイメージですが、ご自身がやるのは世界中にプロ、競技者、愛好家のいるスポーツであり、世界の片隅でローカルに語られる情報やコツを後生大事にするスポーツではないのです。きちんとした知識や情報を理解し、再現できるようになれば、運動能力や筋力、体格などは関係なく、殆どの人が普通にプレイできるようになります。

 

では、もう一方の「スクールに通うだけではうまくならない」という点です。

初心者でテニスを始める際にほぼ唯一で最善の選択肢はテニススクールです。人に教えるには教えるノウハウが必要で、どんなにテニスが上手い人でも初心者にテニスを教えるには教える経験やノウハウがないとうまくいきません。(お父さんが子供に教えたり、サークルで先輩が初心者に教えてもまず上達しません。)

でも、テニススクールに3ヶ月、半年と通ってみると殆どの人が「入る前に思っていたほど上達しないな」と感じ、きっと「テニスが難しいから」からだと思うかもしれません。でも、これには理由があります。

テニススクールは1クラス10名程度の生徒が90分ほどの時間を1~2名のコーチに教わります。生徒の目的も様々で基礎から時間をかけて教わりたいという人も居れば、とにかくボールを打ちたいという人までいます。コーチの数も限られていますし人数も多いことからスクールの指導で優先されるのは「とにかくボールを打ってみること」です。

握り方から教わる入門コースを除き、ボールを打てる段階になれば最初の5分ほど打ち方の説明を受けたらすぐに実際ボールを打ってみることになります。90分の時間の中で1対1でコーチに指導やアドバイスを受けられる時間は3分位でしょうか。1人3分でも10人で30分、レッスンの1/3の時間が必要です。つまり、「スクールは教わるところというより、お金を払ってボールを打つ機会を得るところ」なのが現実です。

勘のいい人は自分で少し打てるようになり感覚が掴めないと何ヶ月経ってもあまり変わらないままです。でも、打てるようになった人も「何となく打てるようになっただけ」なので調子に波があったり不調になったら自分で修正する方法がわかりません。こういうことが続くので「毎週(人によっては週何回も)、スクールに通っているのに思うように上達しない」ということが起こります。

でも、これはスクールに問題があるわけではありません。仕組み上仕方がないことでもあります。中にはコーチの教え方が悪いからだ、スクールがよくないからだと変えてしまう人もいますが、自己満足を除けば、それらを変えても上達度合いはほぼ変わらないはずです。

テニススクールは英会話スクールに似ています。週1回、クラスの仲間と1~2時間のレッスンを受けても英語が話せるようにはまずならないと思います。通う以外の時間で、英語の音声や音楽を聴いたり、英文の本を読んだり、英作文をしたり、予習復習をしたりして、クラスでは先生と会話をしてそれらを確認する。それが望ましい形ではないでしょうか。テニススクールも通っている時間だけで上達するのは難しく、とにかくボールを打つ機会であるスクールでは、それ以外の時間で自習し身につけたことをコーチを相手に確認する場というのが正しい捉え方に思います。

因みにアメリカはUSPTAというプロテニスの協会があり、プロコーチの資格を取った元プロ選手、元競技者、一般愛好家などが大勢いるようです。アメリカの学校には「部活」はなくスポーツは学校のチームとして運営されており、テニスなら顧問の先生の他にこういったプロコーチとボランティアが組んで指導しているようです。(毎日プロコーチの指導が受けられるということ) この他にもプロコーチの指導が受けられる機会が日常的にも多くあるようです。プロコーチはUSPTAの認定を受けた指導法に基づき指導するので、先生やコーチによって指導内容が違う(経験重視でアドバイスする)ということがないと思われます。アメリカがいい、日本がダメという訳ではないですが、初心者から始めて日本の部活やスクールで指導を受けるのとは元々が違うわけです。

 

さて、「スクールは習う所というより自分で身につけたことを確認する場」なのは分かった。ではどう知識を身に付ければいいのかという話になりますが、実際「これが一番の問題」になります。

「テニスは世界中で知識が蓄積され研究も進んでいる」と書きましたがこれは海外の話です。残念ながら日本では「十分知識や情報が整理されていない」のが現状だと思います。毎月出版されているテニス雑誌もありますし、入門書もたくさん発売されています。YouTubeでレッスン動画を配信しているコーチの方もいますし、DVDの形で発売されている教材もあります。

テニスを学ぶことを英会話を学ぶことに似ているという話で言えば、英会話もありとあらゆる教材や学び方、学ぶ機会があり、ものすごい数の方が学習にチャレンジされますが、どれが最も効果的とか、どれが一番効率がいいというのが無い所からも何となく状況が分かるでしょうか? 英会話で学ぶのは「英語」であり学び方は身に付ける手法にすぎないです。「手法」の良し悪しを見るのではなく「英語」にどうアプローチするかです。

テニスも同じで「学び方」や「学ぶ手法」ではなく、「テニスの知識」にどうたどり着くかです。英語もテニスも長い時間で蓄積された知識がそこに存在し、英語A、英語B、新英語のように対象が分かれているわけでもありません。アプローチ方法は様々用意されていても対象自体は1つです。ただ中には辿りつけていないアプローチ方法があると思いますし、まとまっていないのは個々の活動の限界だったり、ビジネス上の理由も多いと思います。

日本では学ぶ方法が整理されていないと書きましたが、入手できる情報もたくさんありますし、昔と違いYouTubeで海外の動画(試合や選手の練習風景、海外コーチの指導動画)も見られます。このことは本当に素晴らしいです。私がテニスを始めた頃はテニス雑誌に載った選手の写真(ようやく連続写真が始まった位)だけを見てあれこれ試行錯誤していました。

初心者の方ならどれでもいいので評判のいい入門書を1冊買って、文章で書いてあること、書いてない写真から分かること、感じられること、 含め、隅から隅まで暗記できる位に何度も読みます。そして書いてあることを素振りやフットワークで確認し、スクールに行ったらそれを実践してみます。うまく行っても行かなくても、次回のスクールまでに現状の課題と本の説明とどう違うか確認します。

ある程度本に書いてあることが理解でき、再現できるようになったら、他の情報を見ていきます。英語の参考書をあれこれ買ってみたけど少し読んで全て止めてしまうのと同じなので、あまり欲張らず、雑誌を立ち読みする程度、YouTubeで色んな解説を見てみる程度でよいです。色々な説明を見ていきます。そうすると解説する人が変わっても同じ説明や同じ表現、同じ言葉を使っているのがわかってきます。その公約数に当たる情報を自分のものにしていき、知識の厚みを増していきます。

『ものごとの正しさを理解できる唯一の術は知識を持つこと』ですね。正しい、間違いは時代によっても変わりますが広い視野で知識を多く蓄積していけば総合的にどれが正しいか、どうすればいいのか自分なりに判断できるようになります。限られた環境の中で聞く伝聞や根拠の分からない情報や噂は正しいか、効果があるかわかりません。根拠のない情報を頼りにテニスを続けるのは、目標に向かってるかも分からず闇雲に走っているのと同じで多くの場合時間が無駄になります。(部活はこれで時間を費やす人が多い。)

また、テニスに限らず「陸上で速く走る体の使い方」や「野球のボールを投げる動作(サーブやフォアハンドの体の使い方と共通点がある)」「動いた際に体のバランスを取る体の使い方(筋力関係ない)」「疲れにくく緊張感を緩和したり逆に心拍数を上げる呼吸法」、「とにかく怪我をしないためのストレッチとトレーニング方法」「食事や水分の取り方」「休息の取り方」など色んな正しい知識を広げていくことが全てテニスにつながってきます。

日本でテニスを始める方が全員、錦織選手が所属したIMGアカデミーのようなきちんとした組織で指導されるような指導 (プロレベルではなくごくごく基礎的なテニスの理解) を受けられるようになったら、日本のテニスの人気はもっとあがるかもしれませんね。日本のテニス人口が350万人居ると書きましたが、国内のプロ大会はあまり盛り上がらないし観客動員も芳しくないと思います。日本では自身がプレイすることとプロレベルの大会に接することがかけ離れている、アマチュアのテニスとプロのテニスが具体的に1本の線で繋がっていないからでしょう。

かなりもどかしいながら、少しずつでも状況が変わっていけばいいなとは思います。ただ、恐らく外資でもなんでも民間企業による革新的な力がないと永遠に無理でしょうね。個人でできることは身の回りのではなく世界基準の最新情報を自分から知識として蓄積しにいくこと』でしょうか。そういう意味では英語がつかえるようになることも重要ですね。ここでもテニスと英語との共通点が出てきました。

志高く自身のテニスを向上させたいと思われるなら、テニスと合わせて英語の取り組みをされることも大事かもしれません。ある意味一石二鳥でもありますね。