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lond日記

思ったことを気まぐれに書きます。

ストロークにおけるボールの速度と回転を考えてみる (テニス)

テニス

ストロークにおけるラケットとボールの関係、ボールスピードと回転量について少し考えてみようと思います。

ラケットがボールに影響するのは触れている0.004秒だけ

まず、ラケットとボールが接触している時間は0.004秒程で、当然のことながら『インパクト前、インパクト後のラケットがボールに触れていない時間にいくらラケットを動かしてもボールに影響を与えることはない』です。とても大事なことですが、多くの人がラケットがボールに接触している時間(=インパクト)に集中することはせず、ラケットをどう動かすかにばかり注意が向くのは不思議なことです。繰り返しますがラケットがボールに影響を与えられるのはインパクトの瞬間のみです。

ラケットがボールに影響を与える要素は?

続いて、スイングしたラケットがボールに影響を与える要素は、主に「ラケット重量」「スイングスピード」「ラケットとボールの当たり方」の3つかと思います。単純考えるなら「ボールを前に飛ばす(推進力を増す)」には、「できるだけ重いラケット」「できるだけ速いスイングスピード」「ボールを打ち出す真後ろから正確に当てる」ことになりますね。ただ、自分が扱える以上のラケット重量はスイングスピード低下を招くのでスイングスピードが下がらない範囲で出来るだけ重い方がいいと考えられます。軽いラケットの方が振りやすい、扱いやすい、重いラケットを長時間使うと疲れるといった考え方もできますが、ラケットを軽くするとその分ラケットスピードを上げないと同じ推進力は得られないわけなので、自分が扱える基準以上に敢えて軽いラケットを選んでしまうのはもったいないかもしれません。

回転をかける要素はラケットスピード

その上でボールに回転をかけるためにはラケットスピードが重要になります。

"ラケットスピード""スイングスピード" は分けて考える必要があります。スイングスピードは腕の速度、ラケットスピードはラケットの速度と考えれば、スイングによりラケットは腕の速度よりも速度が速くなる必要があります。スイングによりそれは可能だし、ラケットの方が速度が速くならない限り、ラケットを使っている意味がないし、自分が思うようなボールスピードや回転量を出すこともできません。


ボールとラケットが接触する際、ラケットスピードは "ボールの推進力""回転力" に振り分けられます。厳密にはラケット重量も回転には影響するでしょうがラケットとボールは接触する0.004秒の中で、接触面が強く大きく動く方がボールに影響、つまり回転力を与えられるはずです。当然、ラケットでボールを正確に捉えて力を十分伝えることは大前提です。ラケットの運動エネルギーを100%ボールに伝えることは無理なので正確にボールを捉えられないだけでかなりのロスが発生します。これは当てる技術の高さだけでなく、ワザと薄い当たりにしてこすり上げたり、正確に当らないほどラケットを無理に振り回すことも関係します。


ちなみに薄いフレームのラケットが厚いフレームのラケットよりもボールが飛ばないのは、しなったり当たった際にブレたりすることでロスが生じるためです。フレームが厚いラケットの方が "飛ぶ" と言いますが、飛ぶ飛ばないではなく、ロスの大きさの問題です。飛ばすだけなら鉄板のようなもので打った方が余程飛びます。

ここまでのまとめ

1)ボールが飛ぶ推進力を出すには自分が問題なく扱える範囲でできるだけ重量のあるラケットの方がいい。

2)ラケットの力をボールに無駄なく伝えるには正確に当てること。当てる技術はもちろん、無理なスイングは当たらない要因になる。

3)ボールスピードと回転をかける大事な要素はラケットスピード。速度が上がらない道具、打ち方ではボールの速度も回転も増加しない。自分の今の打ち方は果たして効率的かどうか?

 

ボールを前に飛ばすことと回転をかけること関係

再度確認ですが、ボールを前方に飛ばす推進力は、主にラケットがボールの後ろから打ち出す方向に向かって振られる結果得られます。回転を考えなければ、真後ろからフラットに正しく当たれば一番ボールが飛ぶ感じでしょうか。一方、ボールにトップスピンをかけるためには、ボールとラケットが接触した0.004秒の間にボールに縦の回転を与える、つまり、ラケット面がボールと接触した位置よりも上向きに動く必要があります。

つまり、前向きに振ってボールを前に飛ばし、且つ、上向きに振ってスピンをかける必要がありますね。これだけ聞くと前向きと上向きで矛盾している感じがしますが、これらがうまく両立できるスイングがあるというわけです。ラケットを後ろから前に振ってボールを後ろから押すのは感覚的にも分かります。分かりづらいのは上向きにラケットを動かす動作だと思います。

まず、思い浮かぶのは初心者の頃教わる「ラケット全体を手で上に持ち上げる動作」ですね。

ラケットを上に持ち上げて回転をかけようとする動作

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テニスを始めたばかりだと手首を固定するようにしてラケット全体を上に持ち上げるようなスピンのかけ方を教わるかもしれません。ただ、これだと強く上向きの力をボールに伝えることができません。

ここで関係してくるのがトップスピンの話ではよく出てくる「ワイパースイング」という動作です。

注: Googleで "wiper swing" と検索してもテニス界で広く使われている用語ではないようです。日本固有のテニス用語(エッグボールとか..)がありますが、海外で "ワイパースイング" と言っても通じないかもしれないので注意したいです。

20年位前のワイパースイングの説明は「大きな窓をぞうきんで拭くように肘を中心に内側に前腕を動かす動作」「肘から先でバイバイと手を振るような動作」と言われていました。実際、その頃の選手はこういう腕の使い方でスピンをかけていました。

トップスピナーの代表だったトーマス・ムスター選手

ムスター選手は元世界No.1で90年代に活躍した選手です。マイケル・チャンコーチとか、女子でもガブリエラ・サバティーニ選手やアランチャ・サンチェス・ビカリオ選手とか、トップスピンと言えば、肘から先の前腕を内側に巻き込むような打ち方でした。トップスピンが流行り始めた頃で一般の人も皆マネしていたので40代位の方でこういう打ち方の人は今もいます。

最初に上げたラケット全体を上に上げるのではなく、体の前でラケットヘッドを肘を支点に引き起こすことで、スイングの中でラケットヘッドが弧を描いて動いていくので、ボールと接触した際に上向きの力を加えることができます。

ただ、この打ち方、スピンはかかるのですが、ものすごく強く振らないとボールを前に強く飛ばす事ができません。女子選手のスピンは中ロブのような軌道のボールだったと記憶しています。このため、現代的なフォアハンドではこういう肘から先を巻き込むような腕の使い方はあまりしません。

 

ラケットを前方に振りボールを飛ばす中で回転をかける

スピンをかけるためにはこのように「インパクトに向けてラケットヘッドを引き起こす」「ラケットのヘッド側を効果的に動かせるか」が重要ですが、これには『肘を支点にする必要はない』わけです。

つまり「ボールを飛ばすためにラケットは前に向かって強く振るけれど、スイング開始時、地面と水平に近い位置にあるラケットヘッドをインパクト前後に引き起こすことで縦向きの回転をかける」ことで、これなら前向きに振っているラケットのスピードはインパクトまで落ちないし、インパクト前後でラケットヘッドが引き起こされるので前向きの力と上向きの力をスムーズに連携、ボールに伝えることができます。(肘を支点にしていたのはその方がパワーが出せるという理解からだったと思いますが肘で巻き込んでいたのはラケットスピードも出せませんね。)

実際の選手がボールを打つフォームを観察してみる

現代の男子選手のフォームを見ると多くの選手がこの点を進化させてスイングをしています。

まず、ラケットを強く握りません。最近よく言われる脱力ですね。要は「リラックスした状態で」ということ。さもないと体の機能が発揮できないからです。

ラケット全体を同時に動かすより手の側を支点にヘッド側を弧のように動かす方が速く強くボールに影響を与えられますが手首を固定したり強く握りしめているとヘッド側をスムーズに動かせません。

その上で、体を捻ってそれを戻す事でスイングするので、体の回転に伴ってテイクバックの位置から水平に近く振り出してきたラケットは、遅れてきたラケットヘッドが加速により手を追い越し更に前方に進んでいく中で、ヘッドの動きに合わせて内旋の動きで前腕が自然と反ることで見た目上手首が返り、ラケットヘッドは起き上がってヘッド側は上側に抜けていきます

このラケットの後ろから前へ動く中でラケットヘッドがボールの下側から上側に抜ける動きで推進力と回転の両方がボールに伝わります。この効果を生むにはこういう打ち方が最適なのだと思います。


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フェデラー選手もジョコビッチ選手もそういうスイングですね。

youtu.be

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昔に比べてラケットやガットが進化し、体の使い方の研究もあり、フォアハンドの打ち方も進化してきました。テニスの話でよくある「選手のマネをする」「あの選手のように
打たないとダメ」といった話ではなく、効率的でパワーも出せ、かつミスなく打てるから多くの上位選手達が当たり前にこういった打ち方をしているということですね。

本来はテニスを始める際に教わるべきこと

スクール等でテニスを教わる際の内容はもう20年以上前から殆ど変わっていないと思います。本来はテニスを始める初心者の時からこういったボールにかかる力などを理解し、こういう打ち方でフォアハンドを習っていくのがよいはずです。

「これは筋力やセンスのあるプロの打ち方で一般には無理だ」と考えるのは間違いです。プロ野球と少年野球、プロゴルファーとキッズゴルファー、体の強さの違いはあってもそれぞれのフォームは同じです。陸上競技選手の走り方は皆同じように見えます。

プロのフォームとアマチュアのフォームが乖離している、アマチュアのフォームが皆個性的なのはアマチュアが体の使い方について学び考える機会がないためで、それが原因でボールを打つのが安定しない、怪我をしてしまうという弊害があります。

皆ボールをうまく打てないのは技術が低いせいだと考えますが、走り方を知らないのに速く走れない、速く走るコツは何だと考えるのと同じだと思っています。